850馬力で最高速は345km/h! アストンマーティンはなぜ今“フロントエンジンV12モデル”を極めるのか? 世界150台限定「ヴァレン」のねらいとは
850ps&最高速345km/h! でも、ただ“速いだけ”のV12モデルではない
アストンマーティンが現地時間の2026年8月14日に米国カリフォルニア州モントレーで発表した新型「ヴァレン」は、同ブランドが培ってきたフロントエンジンV12モデルの魅力を、性能だけでなくドライビング体験まで含め、極限まで高めたスペシャルモデルです。
開発を手がけたのは、アストンマーティンのビスポーク・サービスである“Q by Aston Martin”。さらに、新設されたSVO(スペシャル・ビークル・オペレーションズ)部門の専門技術も投入されています。
アストンマーティンは「ヴァレン」を、“世界最強のフロントエンジン搭載の市販車”であり、113年に及ぶブランドの歴史で最も高出力なフロントエンジンモデルだと位置づけています。
搭載されるのは、5.2リッターのV型12気筒ツインターボエンジン。最高出力は850ps、最大トルクは1000Nmで、その1000Nmをわずか2500rpmで発生します。
トランスミッションはZF製の8速ATで、アストンマーティン「ヴァンテージ GT4」のレースプログラム向けに開発されたシフト戦略も導入。0-100km/h加速タイムは目標値で3.1秒とされ、最高速度は電子制御によって345km/hに制限されます。
フルカーボンファイバー製のボディは、そうしたハイパフォーマンスを視覚的に表現したものです。低く落ち込むボンネットの下にスリムなヘッドライトを配置し、大きく張り出した前後フェンダーや鋭角的なフロントスプリッターも採用。アストンマーティン自身、フロントエンジン・リアドライブというレイアウトを強調するデザインだと説明しています。

ただし、「ヴァレン」の本質は850psや345km/hといった数字だけではありません。フロントエンジンV12という、アストンマーティンが長年、育ててきた形式を、最新技術でどこまで進化させられるか。その挑戦こそ、このモデルの大きな存在意義でもあるのです。
●なぜ今、フロントエンジンV12なのか? 背景にある特別な系譜
今回の発表内容から、アストンマーティンが今なおフロントエンジンV12を磨き続ける理由のひとつとして見えてくるのが、フロントエンジンV12というレイアウトが、同社の特別な高性能モデルを象徴する存在として受け継がれてきたことです。
「ヴァレン」は突然、生まれたモデルではありません。
アストンマーティンは、2009年に7.3リッターV12自然吸気エンジンを搭載し、最高出力760psを発生する「One-77」を発売。当時、世界最強の自然吸気スーパーカーと評価されました。
そして2020年には、1970年代の「V8ヴァンテージ」から着想を得たワンオフモデル「ヴィクター」が誕生。その思想は、2023年の「ヴァラー」、2024年の「ヴァリアント」へと受け継がれていきます。
「ヴァラー」と「ヴァリアント」のパワートレインは、ともに5.2リッターのV12ツインターボと6速MTの組み合わせ。アストンマーティン自身が“アナログなドライビングスリル”を称えるモデルだと表現しています。
新しい「ヴァレン」という名前も、これらの系譜を踏襲したものです。「強い」「強力」を意味するラテン語の「valens」に由来するネーミングであるとともに、アストンマーティンの高性能モデルで続いてきた「V」で始まるネーミングの伝統も受け継いでいます。

一方、「ヴァレン」はアストンマーティンのヒストリーをそのまま踏襲したモデルではありません。その象徴が、トランスミッションに6速MTではなく、8速ATを採用しているとところです。さらに「Sport」、「Sport+」、「Track」という各ドライブモードでは、アクセル操作に対するスロットル特性まで変化します。
「Sport」と「Sport+」では、ペダル操作の早い段階からスロットル開度を高めて鋭いレスポンスを実現。一方の「Track」では、限界域での精密なコントロールを優先し、より段階的な特性としています。
つまり、アストンマーティンが守ろうとしているのは、昔ながらのメカニズムそのものではありません。フロントにV12を搭載し、後輪を駆動するという伝統的なスーパーカーの形式が生み出す感覚を、現代の技術でさらに強く、鮮明にすること。それが「ヴァレン」のねらいといえそうです。
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