見た目から走りのスゴさを予感! ポルシェ新型「911 GT3 RS」は迷わずアクセルを踏める“公道を走れるレースカー”
新しいGT3 RSはエアロダイナミクスとシャシの進化に注力
新しいポルシェ「911 GT3 RS」のテストのために訪れたシルバーストーンサーキットには、初めて設定された2004年のタイプ996後期型に始まる歴代のGT3 RSがズラリと並べられていた。世界のさまざまなコースで試乗した記憶をなつかしく思い出しながら改めて認識したのは、いずれの世代もGT3 RSは、レーシングコースで躊躇なくアクセルを踏めるマシンだということだった。
“タイプ992”の「911」では初登場となる新しいGT3 RSも、やはり例外ではない。パワーを持て余し、アクセルペダルを踏む右足がつい戻ってしまうようなクルマではなく、もっともっと踏んでいける、踏んでいきたくなるマシンに仕上がっていたのである。しかも文句ナシに、過去最高のレベルで。

垂涎の4リッター水平対向6気筒自然吸気エンジンは、最高出力525psと「911 GT3」に対して15ps向上している。これは主にカムプロファイルの変更によるものだが、実は最大トルクは465Nmと逆に5Nmダウンとなる。各気筒独立のスロットルは吸気抵抗を削減するべく加工が施され、高G下でのオイルのかたよりを防ぐためにブロックも別あつらえとするなど、スペックには現れない変更が多数おこなわれているのは、さすがRSだ。
さらに、組み合わされる7速のデュアルクラッチ式トランスミッション“PDK(ポルシェ・ドッペルクップルング)”は、ギア比がショート化されている。最高速は296km/hで、GT3の318km/hよりずいぶん低くなっているが、これは後ほど述べる大幅なダウンフォース向上に対して、動力性能を落とさないため、という意味もあるはずだ。実際、0-100km/h加速はGT3の3.4秒に対し、3.2秒へと短縮されている。
しかしながら、新型でとりわけ力が割かれたのは、むしろエアロダイナミクスとシャシである。そのことはあえて記すまでもなく、その姿を見れば容易に想像できるだろう。実際、911 GT3に対する跳躍の幅は、過去最大といっていい。
エアロダイナミクスの進化における一番のポイントは、従来はフロントバンパー下側の開口部、中央と左右の3つすべてを使っていたラジエーターを、中央のひとつに集約したことだ。空いた左右のスペースには床下に可動式フラップが設けられ、必要なときにはここから空気を流れ込ませる。
最新の911 GT3で、911として初めてダブルウイッシュボーン式とされたサスペンションは、アームが翼断面となっていてここだけで最高速の際に約40kgのダウンフォースを稼ぎ出す。フェンダー上のスリット、ホイールハウス後方のドアまで続く大胆なえぐりは、その空気を効率よく吐き出すためのものだ。
この床下のフラップは、スワンネックタイプのステーを用い、なんとルーフよりも高い位置にある可動式のリアウイングと連動していて、走行中は自動的に最適な状態に導かれる。加速中には寝かされて抵抗を減らし、減速時や旋回中には立ち上がってダウンフォースを生み出し、挙動を安定させるのである。あるいは、ステアリングホイールのスポークに置かれた“DRS(ドラッグ・リダクション・システム)”スイッチを押すことで、追い越しの際など好きなときにウイングをフラットにし、直線スピードを稼ぐこともできるのである。

ちなみに、中央に集約されたラジエーターを通過した空気はボンネット上面から排出されるが、その流れはダクトの形状によって真っ直ぐ後ろ、にではなく、左右に振りわけるような形とされる。911 GT3はボディ左右ではなくリアエンジンフードに吸気口があるため、そこにラジエーターを通過した温かい空気を導きたくないからである。ルーフ左右につけられたフィンも、やはりエンジンへの吸気、リアウイングへの空気の流れを整える役割を果たすものだ。
すべてを説明しているとまさにキリがないほどだが、追加された空力アイテムがすべて機能的な意味を持つものであることは間違いない。それらの果実として得られたダウンフォースは、200km/h時に合計409kg。先代の後期型、いわゆる“991.2”型GT3 RSの2倍、現行GT3の3倍にもなる。そして285km/hでは実に860kgにも達するというから、車重に対して約5割増しの荷重でタイヤは地面に押しつけられるわけだ。
フロントサスペンションはワイドトレッド化に伴ってアーム長が伸ばされ、ロアアームは取りつけ位置変更などジオメトリーも適正化されている。そしてなんとステアリングホイール上のスイッチ操作によって、前後のダンパーは伸びと縮みについて各4段階ずつ個別に、そして電子制御LSDの“PTV(ポルシェ トルク ベクタリング)”も加速時と減速時のそれぞれに効きを、走行中でも容易にアジャストすることが可能なのである。
ブレーキも当然、強化されているが、“PCCB(ポルシェ セラミックコンポジット ブレーキ)”は交換などの自由度に考慮してかオプション。タイヤは公道仕様スポーツタイプということで、試乗車にはミシュランの「パイロットスポーツ カップ2」が装着されていた。さらに、ドライグリップ重視のカップ「パイロットスポーツ カップ2R」も用意されている。
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