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2023年春に日本上陸! フランスで乗ったルノー新型「カングー」ディーゼル×MT仕様の気になる実力とは

おだやかながら力強く乗り手をリラックスさせる懐の深さ

 シトロエンが「ベルランゴ」を、プジョーが「リフター」を展開するようになったおかげで、カングーが先駆けた商用車ベースのフレンチMPVは、日本市場でも随分メジャーなジャンルになった。

ラゲッジスペースの容量は、5名乗車時で775リッター。助手席の背もたれまで前に倒せば最大3500リッターにまで広がる
ラゲッジスペースの容量は、5名乗車時で775リッター。助手席の背もたれまで前に倒せば最大3500リッターにまで広がる

 安寧や安堵の時間というのは、強固に構築されたインフラめいた土台の上に成り立つもので、フレンチMPVだけが持つ業務用ベースの強靭さは、やはり替えの効かないものである。

 ちなみにカングーのラゲッジスペース容量が、5名乗車時で775リッター、3名乗車時で1200リッター、さらに助手席を倒せば3500リッターといった具合に、フォーメーション別のわかりやすさで示してくれる辺りも、さすが十進法とメートル法の国という感じがする。

 新型カングーに関しては、ガソリンエンジン+7速デュアルクラッチ式AT仕様の軽快さ、伸びがよくて活発な乗り味も捨てがたいが、ディーゼルエンジン+6速MTはもっと朴訥とした感覚というか、おだやかだけど力強く、結果的にゆっくりリラックスさせる懐の深さ、あらゆる乗り手を“マイペース大魔王”にしてしまうところがある。

 ただしそれは、電車の乗降口でスマホゲームに夢中になっているような狭義のマイペースではなく、人と関わる用意ができているマイペースさ、とでもいうべきもの。ひとりで乗るばかりのクルマじゃないところが、商用車ベースだけど商用車ではない、乗用車としての新型カングー“らしさ”だ。

 よくフランス語で、同じ食卓やスペースを囲む人々とにぎやかに交わることを「convivial(コンヴィヴィアル)」という形容詞で表すが、カングーの車内空間が目指しているのは、まさにそれ。「コンヴィヴィアリティ(自立共生)」などと厳めしい訳語があてられることもあるが、食事や社交、くつろぎの場で自分以外の誰かとワイワイやっていれば、そういうことなのだ。

 新型カングーのディーゼルエンジン+6速MT仕様の乗り心地は、驚くほど上下ストローク量があるわけではないものの、ほどよく踏ん張って吸い込む足回りの感触に固さはない。傾き過ぎてみたり、車内の荷物や乗員の頭にムダな揺れを伝えてこなかったりするところは、さすがカングーといえる。

 それに、決してクイックではないが、テンポのいいハンドリングと足回り、そしてねらったラインをたどりやすい正確なトレース性は、雨が降る下りの峠道のような場面においてがぜん活きてくる。多めの荷物を積んで走行しているときでも、荷物が少な目のときと地続きの感覚でいけるドライバビリティを備えているか否か。そういう当たり前のように見える“下支えクオリティ”こそが、絶対値や偏差値的に「スゴい」とか「優れている」ことより重要で、満たすべき要件を安定してキチンと満たせることが決め手になる。

 MTならなおさら、登り坂の途中で不意にシフトがキックダウンするとか、CVTのラバーバンドフィール炸裂の「ブォオーン!」的な非力で間の抜けたうなりにさいなまれることもない。ストロークは長めだが摺動感は確かなMTのシフトレバーを操って、2速にゴクッと押し込むその動作の瞬間も、誇らしく泰然とした気持ちでいられる。

* * *

 2023年春頃に日本へ上陸するモデルは、リアハッチが観音開きタイプになることが発表されているが、ロゴやバッジ類を見てもディーゼル車はガソリン仕様との差が皆無で、もしかしたら潜在的なディーゼル・カングーのオーナーにとって、そこだけが物足りなく映るところかもしれない。

 それにしても、カングーひいてはディーゼルMT仕様の美点とは、日本に訳語だけでは定着しないものの外来語にするには長過ぎた、そんな概念がきっちり含まれていることにも気づいた。意外とカングー、特にディーゼルMT仕様は、社会的な乗り物なのかもしれない。

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