落札価格は非公開! イタリアの名門・ベルトーネの「最後の輝き」がオークションに登場!! 走行可能なワンオフモデル「ヌッチオ」とは
「ストラトス ゼロ」にヒントを得た21世紀のスーパーカー
2014年3月、自動車界に衝撃が走りました。イタリアの名門カロッツェリア・ベルトーネが破産申請したのです。創設から100年以上の歴史を持つ老舗の終焉は、自動車デザイン界におけるひとつの時代の終わりを意味していました。
そんなベルトーネが最後に放った輝きが、2012年に発表されたワンオフモデル「ヌッチオ」です。

ベルトーネ創立100周年を記念して製作された「ヌッチオ」は、同社の創設者であるジョヴァンニ・ベルトーネの息子、ヌッチオ・ベルトーネのファーストネームにちなんで命名されました。
ヌッチオ・ベルトーネは1912年に、父ジョヴァンニが設立したファミリービジネスの舵を執り、世界的なカロッツェリア兼少量生産メーカーへの道を導いた人物です。
当時のデザインディレクターであったマイク・ロビンソンは、「ヌッチオ」をデザインするに当たり、同社の最も象徴的なワンオフモデルであるランチア「ストラトス ゼロ」からインスピレーションを得て、それを21世紀に向けて再解釈しました。
ロビンソンは初めて「ストラトス ゼロ」のポスターを見た際、即座に魅了されたそうです。
「それまで見た中で最も美しいクルマだっただけでなく、最も革新的なモデルでした」とロビンソンは回想しています。
その上で「ストラトス ゼロ」は、「当時のカーデザインの構成要素について、すべてのタブーを打ち破った1台でした」と振り返っています。
「ヌッチオ」は「ストラトス ゼロ」と同じウェッジシェイプを採用し、貝殻模様のルーフと平坦なフロントウインドウが特徴的なデザインとなっています。
フロントノーズを横断するように装着されたLEDストリップはヘッドライトの役割を担い、特許取得済みのブレーキライト・リピーター機能もおごられています。これは、横断歩道にて、接近する車両がブレーキをかけているか否かを歩行者に識別させるアイデアです。
「ヌッチオ」は2012年3月に開催された「ジュネーブモーターショー2012」で初公開されましたが、ベルトーネが展示したのは完成車ではなくモックアップでした。
ただしベルトーネは、トリノの工場において同年開催される「北京モーターショー2012」に向け、走行可能な「ヌッチオ」を手がけていたのです。
●最新のオークションには走行可能モデルが登場
「北京モーターショー2012」で披露された走行可能な「ヌッチオ」は、ジュネーブで初公開されたモデルからわずかに変更が加えられていました。
デザインは大部分が同一でしたが、フロントノーズのLEDストリップを保持しながらスタンダードなヘッドライトが追加され、ワイパーも装着されていました。
そしてフロントウインドウは、よく見るとつけ根部分から上部にかけて幅が広がっていました。
「ヌッチオ」のハードウェアには、2005年式フェラーリ「F430」(F1マチック仕様)が用いられています。
ただし、フェラーリ社の強い要求により、ベルトーネは流用した部品のすべてについていた跳ね馬のロゴを隠さなければなりませんでした。そのため、エンジンのバルブカバーやエキゾーストに書かれていた「Ferrari」の文字もアルミプレートで覆われています。
「ヌッチオ」のインテリアは極めて実用的であり、少量生産を目指していたことがうかがえます。
「F430」から流用したパーツもそれと分からないよう、巧妙に偽装されています。あえていうなら、エクステリアのエキゾチックさに比べると、アナログ計器はやや平凡に見えたかもしれません。
「ヌッチオ」は「北京モーターショー2012」の後、カリフォルニア州のモントレーで開催された「コンコルソ・イタリアーノ」に展示され、アメリカでデビュー。しかも、カーデザインへの貢献が認められ、賞も獲得しています。
その後、ヨーロッパに戻ってイベントに数回登場した後、走行可能な「ヌッチオ」は2012年末にモックアップとともにトリノ近郊にあるカプリエのスティーレ・ベルトーネ施設内に収められました。
実はベルトーネ、世界各地を飛び回った「ヌッチオ」の売却を希望していましたが、結局、買い手はつかなかったのです。
破産申請後、ベルトーネの資産処分を目的に、いくつかのオークションが開催されました。
2018年11月の、イタリアのオークションハウスである「アステ・バラッフィ」では、初めて走行可能な「ヌッチオ」が登場。24万ユーロ(現在のレートで約4132万円)で落札されています。
しかも車両だけでなく、モックアップや「コンコルソ・イタリアーノ」で獲得したトロフィー、「北京モーターショー」でのお披露目時にモデルが着用していたマイク・ロビンソンがデザインした衣装まで含まれていたのです。
そんな「ヌッチオ」が久しぶりに公の場に姿を現したのは、2025年始めのスイス・サンモリッツでのクラシックカーイベント「ザ・アイス」でした。
その後、2025年7月には、RMサザビーズの「シールド・ドロップ」と呼ばれる非公開の入札式オークションに登場。それを見込んでの「ザ・アイス」登場は、実に上手いプロモーション手法といえます。
今回、RMサザビーズのオークションに出品されたのは、走行可能な「ヌッチオ」のみですが、落札価格40万~50万ユーロ(約6886万円〜8608万円)とやや強気の予想でした。
残念ながら落札結果はベールに包まれることになりますが、このベルトーネ最後の作品が新たなオーナーの元で大切にされることを願わずにはいられません。
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