ポルシェ×東京大学の「LEARN with Porsche」に“ものづくりが好きな若者”が集結! 再生したポルシェ製トラクターで森から木を切り出したねらいとは?【Behind the Product#31】
ポルシェ製トラクターのレストアとトレーラー製作という貴重な体験
2021年のプロジェクト開始から、2025年で5年目を迎えた「LEARN with Porsche」。これは、ポルシェジャパンと東京大学先端科学技術研究センター「個別最適な学び寄付研究部門」がパートナーシップを結び、若者の夢の実現をサポートするユニークな取り組みです。
現在「LEARN with Porsche」の核となるプログラムはふたつ。「ものづくりが好きな若者向けのプログラム」と「君の学びを変えるサマープログラム」で、いずれも中高生の夏休み期間に開催されています。本記事では、2025年の「ものづくり」プログラムの模様を振り返ることにしましょう。

「ものづくりが好きな若者向けのプログラム」の今年のテーマは“森や機械に興味のある高校生あつまれ「ポルシェで森に入る〜’60年代のポルシェトラクターを整備して森の生活を知る5日間〜」。
本プログラムでは3年前から、ポルシェ・ディーゼルモトーレンバウGmbHが1960年代の初頭に製造した「Standard Star 219トラクター」のレストアをおこなっています。
初年度は、主に外装の修復とエンジン始動に向けての整備を、2年目は外装の修正やギアボックス&ブレーキの修理をおこない、トラクターが自走できるまでになりました。
そして3年目となる今年は、“かろうじて始動する……”状態だったエンジンと電装系の修理、さらに、荷物を運ぶトレーラーを製作するという内容です。
プログラムは5日間にわたり、公募によって選ばれた中学2年生から高校3年生までの女子2名、男子7名の計9名が参加。参加者は北海道の十勝地方にある「森の馬小屋」でプログラムに挑みました。
レストア作業は、馬小屋を営む田中次郎さんと、トラクターの専門家である池田猛さんが監督やサポートを担当。「LEARN」プログラムを率いる東大先端研のシニアリサーチフェローである中邑賢龍さんと研究室のメンバーたちが参加者をフォローします。また、ポルシェジャパンの広報部長である黒岩真治さんも現地に足を運び、すべての工程を見守りました。
1年目は「ポルシェをレストアするといっても、スポーツカーじゃなくてトラクターなの!?」と、参加者たちが拍子抜けというシーンもありましたが、今回は3年目とあって、みんなの志望動機に変化が見られるようになりました。機械いじりやトラクターに興味があるという、積極的な子どもたちが増えたように感じます。
とはいえ実作業となると、一筋縄に進まないのが世の常。さらに、プログラム期間中はスマートフォンの使用が禁止されているため、1750ccの4サイクル2気筒エンジンのヘッドまわりの分解はいうに及ばず、清掃や整備も四苦八苦といった様子。
もちろん、要所では池田さんと田中さんがやるべき作業やメカニズムなどを参加者に伝えますが、工程や使う道具を考え、さらに手を動かすのは子どもたちです。
当然、ひとりでは与えられた課題をクリアできません。なので“考える”から“手を動かす”というサイクルにおいても、仲間とのコミュニケーションが重要となります。
また、ドライバーやレンチ1本の扱い方についても、参加者ごとに経験値が異なり、仲間どうしでコミュニケーションを取りつつ、作業を進めなければなりません。
そんな中で興味深かったのは、日に日にどころか、1時間ごと、1分ごとにでも参加者の成長が見られたこと。黙っていたり手を止めていたりしては何も進まない、何も解決しないという現実はみんなの工夫を生み、コミュニケーションや行動の原動力となったようです。
一方、自分勝手な振る舞いや安全を無視した行動には、田中さんから厳しい口調での注意が飛びます。何しろバーチャルな世界とは異なり、一瞬のミスが事故やケガにつながる現実の世界。田中さんの“お叱り”にも似た注意は安全のためのアドバイスであり、参加者もそれが分かっているからこそ素直に受け止めていたのでした。
●深い学びととかけがえのない成功体験を獲得した参加者たち
こうして3日目の夕方には、トラクターも見事に息を吹き返し、トレーラーも無事に完成。さらに4日目の午後には、トラクターとトレーラー、そして田中さんが飼育する馬を連れて森へ行き、木を切り倒すという課題が与えられました。

まずはふたり、または3人のグループを組み、放牧場で馬を捕まえます。鞍をつけ、馬に乗るための方法を田中さんが伝授。馬は繊細な動物であると同時に、捕まえ方や乗り方を誤ると大きなケガにもつながりますから、田中さんは時には厳しい口調で参加者に接しますが、その甲斐あってすべてのグループが無事に馬を捕まえることができ、森へと進むことができました。
到着した森は、まさに鬱蒼(うっそう)という言葉がピッタリの深い森。カラマツやシラカバが周囲一面に茂っていました。池田さんも田中さんも、かつては開拓や薪を得るために斧やノコギリで木を切っていたといいます。
続いて池田さんと田中さんが木を選び、参加者による倒木作業へと移ります。ところがこれが、想像以上に大変な作業だったのです。
参加者たちは細いシラカバでの練習を経て、幹の直径が30cmほどのカラマツに挑みます。しかしカラマツは、みんなが1時間ほど斧を振るい続けても、倒れるどころか傾く気配すらありません。まさに大自然の力強さを実感することになった木こり体験ですが、参加者も負けてはいません。
誰ともなく「あと5分ください!」と大きな声が出ると、全員の連係プレーで交代しながら斧を振るいます。終盤には、池田さんと田中さんも参戦。予定時間を超える挑戦となったものの、見事にカラマツを切り倒したのでした。
その後、自作トレーラーに収まるサイズに切り出してカラマツを積み込み、快調に走るトラクターで牽引して森を後に。馬とともに歩く参加者らは達成感に満ちあふれ、晴ればれとした表情が実に印象的でした。
機械や機会、場所の提供は大人の役割ですが、プログラムそのものに筋書きはありません。今回のレストア作業とトレーラー製作は所期の目的を達成、苦労を味わいつつも木を切り、森から運び出すことにも成功しました。
極端なことをいえば、いずれかの工程が未完に終わったとしても、機械化の意味やありがたさ、森での生活の大変さを実体験として学べたことでしょう。とはいえ、すべてのプログラムをクリアした参加者にとって、今回は深い学びとなったのに加えて、かけがえのない成功体験となったのは間違いないでしょう。
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