9000回転まで回るエンジンを味わうために誕生!? 四半世紀を経ても色あせないホンダ「S2000」の“走る悦び”とは【今こそ乗っておきたい名車たち】
絶滅危機にある“野生の興奮”を堪能できる1台
自動運転がどうの、全固体電池搭載の電気自動車がこうのと、多くのメディアは相変わらず、クルマの世界の“未来の正解”を探すのに忙しい様子。けれど、多くのクルマ好き、少なくとも筆者(伊達軍曹)が本当に渇望しているのは、そんなスマートなモデルではありません。
指先に伝わるエンジンの鼓動、鼓膜を震わせる吸気音、そして右足のわずかな動きに過敏なまでに反応するむき出しの機械感……。そんな“野生の興奮”はいまや絶滅危惧の状態にあるわけですが、そうした興奮を今なお堪能できる1台のスポーツカーがあります。それはホンダ「S2000」。
ホンダの創立50周年という祝祭の中で生まれた「S2000」も、誕生から四半世紀を経た今、中古車市場において“甘美なる毒”としての輝きをさらに増しているように、筆者は思うのです。
「S2000」は1999年、ホンダにとって29年ぶりのFRスポーツとして誕生。そしてある意味、異様なFRスポーツでもありました。
まずエンジンからして、ちょっと“おかしい”のです。初期型(AP1)に搭載された2リッター直列4気筒DOHCの“F20C”型は、250psの最高出力を8300rpmで発生し、レブリミットは実に9000rpm。1リッターあたりの出力は125馬力と、当時、市販されていた自然吸気エンジンとしては世界最高レベルのスペックを誇っていました。
さらにシャシーもすさまじい。オープンボディでありながら、閉断面の大型フロアトンネルを骨格とした“ハイXボーンフレーム”を採用。当時のホンダが「クーペ以上の剛性を目指した」と豪語したとおり、その体躯は現在の視点で見ても強烈に強固です。

そしてトランスミッション。このクルマのためだけに新開発された(そのこと自体がちょっと“おかしい”)6速MTは、吸い込まれるような極上のシフトフィールを実現。
要するに、クルマを構成するほぼすべての要素が、“走る悦び”という一点だけに向けて、一切の妥協なく研ぎ澄まされた1台だったのです。
1999年当時はもしかしたら、そういった方向性も決して珍しいものではなかったのかもしれません。けれど、2026年の世を生きる令和の感覚で見れば、本当に“おかしい”のです。
そんな「S2000」の魅力を語る上で避けてとおれないのは“VTECのはじけ方”でしょう。
5000rpmを超えた辺りからその音色が変わり、6000rpmを超えると“世界”が加速します。そこから9000rpmまでは、もはや内燃機関のそれではありません。それはまるで超高性能モーターのようであり、あるいは数億円レベルの精緻な楽器です。
とはいえ「S2000」は、意外と二面性を秘めた1台です。ソフトトップを閉めて“本気モード”の走りをすれば、珠玉の専用設計シャシーがもたらすタイトなスポーツ性を堪能できるのはご存じのとおり。
しかし、ソフトトップを降ろしてクルージング気分でアクセルペダルを踏めば、四季の移ろいと、心地いいVTECサウンドをダイレクトに享受できる“大人のロードスター”としての味わいも堪能できるのです。
この「S2000」というクルマの“ふたつ目の顔”について、若き日の筆者はあまりその価値を理解していなかったように思います。けれど、中年となり、人生の深みのようなものを(一応)知った今では、“クルージングコンバーチブル”としての「S2000」にも価値を感じているのは確かなのです。
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