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クルマは“外に持ち出せる唯一の家具”!? レクサスやマセラティはなぜミラノデザインウイークに出展? インテリアスタイリストが読み解く「クルマが“空間”になる時代」

レクサスは「空間」、マセラティは「家具」まで提案

 毎年春、イタリア・ミラノが世界中のデザイン関係者で埋め尽くされます。彼らがチェックしに足を運ぶのは「ミラノデザインウイーク」。その中心にあるのが、世界最大級の家具の見本市「サローネ・デル・モービレ・ミラノ」です。

 ただし現在では、家具メーカーが集まる本会場だけでなく、それを取り囲むようにミラノ市内のショールームや歴史的建築物、ギャラリーなどでおこなわれる膨大な展示を含めた1週間全体を「ミラノデザインウイーク」と呼ぶのが一般的になっています。

 約25年にわたって現地を訪れてきたインテリアスタイリストの窪川勝哉氏も、「今は『ミラノサローネ』というよりも、『ミラノデザインウイーク』という呼び方の方が実態に近い」と話します。家具以外の業種による参加も増え、世界中からデザイン感度の高い人たちが集まる巨大なイベントに成長しているといいます。

 実際、2026年も、高級車ブランドの存在感は小さくありませんでした。代表的なのがレクサスです。

 レクサスは、2005年から継続してミラノで作品を発表しており、2026年の「ミラノデザインウイーク」では、「SPACE」をテーマに5作品を世界初公開しました。

 中心となったのは、次世代のショーファーカーであるレクサス「LS コンセプト」を軸とした没入型インスタレーション「SPACE」です。しかし、モーターショーのようにクルマを置き、そのスペックや機能を説明する展示ではありません。

 “人を空間ごと動かす”未来を表現したレクサス「SPACE」と「LSコンセプト」
“人を空間ごと動かす”未来を表現したレクサス「SPACE」と「LSコンセプト」

 360度の映像に音や光を組み合わせ、「車内」という従来の枠を超えたモビリティ空間の可能性を表現。「Discover Together 2026」では4組のクリエイターが、「今までにない自分だけのプライベート空間」をそれぞれの解釈で作品化しました。

 またレクサス自身も、モビリティを目的地へ向かうだけの手段ではなく、ライフスタイルそのものを豊かにする体験へと進化させる考えを示しています。

 一方、マセラティはさらに直接的に“家具”の領域へと踏み込みました。2026年は初めて「ミラノサローネ」のスポンサー兼メインモビリティパートナーとして参加。イタリアの家具ブランド・ジョルジェッティとのコラボレーション「ジョルジェッティ マセラティ エディション」の第2弾を披露しました。

 テーマは「プレイフル・オフィス」。デスク「Kimé」やエグゼクティブチェア「Aphirà」、テーブルフットボール「Nereo」などを展開し、マセラティがクルマで表現してきた動きやスピード、エレガンスを、家具のフォルムや素材へと置き換えています。

 さらにマセラティのショールームでは、透過型VRヘッドセットを使って「グレカーレ」のボディカラーやホイール、ブレーキキャリパー、インテリアなどをリアルサイズでカスタマイズできる体験も用意されていました。

 こうした動きはレクサスとマセラティに限りません。

 アウディはザハ・ハディド・アーキテクツと組み、新しいデザイン哲学を建築空間へ置き換えたインスタレーション「Origin」を公開。「Origin」ではクルマそのもののスペックや機能を説明するのではなく、「クラリティ」「テクニカリティ」「インテリジェンス」「エモーション」というブランドのデザイン思想を空間として体験させました。

 ランボルギーニは限定630台の「ウルス SE “Tettonero”カプセル」を発表しましたが、こちらも単なる新車展示ではありません。デザインが生まれるプロセスをテーマに光や素材、空間、さらには料理まで組み合わせた体験を用意し、パーソナライゼーションというブランドの価値を五感で伝えました。

レクサス「SPACE」で展示された「LSコンセプト」
レクサス「SPACE」で展示された「LSコンセプト」

 ではなぜ、高級車ブランドはこれほどまでにクルマ以外のものを披露するのでしょうか? 窪川氏は、その理由をこう読み解きます。

「デザイン感度の高い人が、世界中からその1週間を目がけてミラノに集まるわけです。そういう人たちに、企業のビジョンや世界観を伝えることは、彼らにとってすごく重要な機会なんだと思います」

 つまり、ミラノで伝えたいのは、単純な「新しいクルマができました」というアピールではありません。“私たちはどんな美意識を持ち、これからどんな世界をつくろうとしているのか”を示すこと。それこそが、高級車ブランドが「ミラノデザインウイーク」に出展する大きな理由なのです。

Nextなぜクルマと家具が近づく? 「外に持ち出せる唯一の家具」という視点
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