トヨタ新型「クラウン」は異端じゃない!? 4代目“クジラ”に通じる型破りこそ日本が求めていたエナジーだ
他人事ではなく自分事で考えられる新型クラウン
話を元に戻そう。21インチという大径タイヤを履いた新型クラウン クロスオーバーは従来のクラウンとは似ても似つかぬ雰囲気だ。セダンのようでクーペのようでSUV的でもある。まさにジャンルを超えたクロスオーバーである。正直いうと最初は面食らったが、こいつをクラウンだと受け容れるのに、そう長い時間は必要なかった。それどころか、他人事ではなく自分事で考えられるクラウンがついに出てきたな、とさえ感じた。

それはおそらく僕の“クラウン原体験”と深い関係がある。ちょうど5歳。物心がつくころに自宅にあったのが、4代目クラウンだった。“クジラ”と呼ばれた4代目クラウンは、いま見ても驚くほど斬新なデザインで、子ども心にとても気に入っていた覚えがある。
ただし、販売は振るわなかった。世間だけでなくトヨタ社内でも「デザインが飛びすぎたことが失敗の原因だ」といわれていたが、社内で再検証したところ、当時起こった品質問題が販売にかなりのダメージを与えていたことがわかったという。だとすると、仮に品質問題が起こっていなければ4代目クラウンは人気を博し、その後のクラウンのキャラクターは違うものになっていたかもしれない。そんなパラレルワールドが存在したとすれば、その世界におけるクラウン クロスオーバーは「正常進化」とか「キープコンセプト」といわれていただろう。
であるなら、そのパラレルワールドを現世にもってくることで「若返り」と「クラウンらしさ」を両立できるはず、とデザイナーは考えたのではないか。実際、クラウン クロスオーバーの特徴的なリアスタイルは、4代目のワゴン仕様である「クラウン カスタム」の姿を強く想起させる。リアドアの造形や細いフロントグリルも4代目へのオマージュだろう。偶然の一致とするには、あまりに似すぎている。
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ここまで考えると、クラウン クロスオーバーを「クラウンらしくない」と批判するのは、クラウンの歴史の一部しか見ていないことの証明といわざるを得ないだろう。初代(1955年)から4代目(1971年)までのクラウンには、人々が昨日より今日、今日より明日の方がより豊かに、より幸せになると信じて疑わなかった高度成長期特有の前のめりなダイナミズムがみなぎっている。
変わらなければならないことはわかっているのに変われない……バブル崩壊以降、そんな閉塞感に覆われつづけている日本にいま必要なのは、4代目クラウンが大ヒットした“パラレルワールド”なのではないか。そういう意味で、クラウン クロスオーバーから感じるのは、クラウンという1車種の復権にとどまらない、日本社会全体へのエールだ。
豊田章男社長は「クラウンが、世界中の人々に愛されることで、日本がもう一度、元気を取り戻すことにつながれば、こんなにうれしいことはありません」という言葉で発表会のスピーチを締めくくった。果たしていまの日本社会は、クラウン クロスオーバーを受けいれられるのだろうか?
クラウン クロスオーバーの発売は2022年秋の予定だが、発表会のリアルタイム視聴数の多さに当のトヨタも驚き、実車を展示した六本木ヒルズの特設会場には黒山の人だかりができ、YouTube公式チャンネルにアップされたインプレッション動画の再生回数は、あっという間に100万回を超えた。閉塞感という長いトンネルの出口がようやく見えてきたのか? そうであって欲しいと強く思う。
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