三菱の新型「eKクロスEV」のデザイン思想が兄弟車の日産「サクラ」と異なる事情とは?
軽自動車の常識を変える力強いパワートレイン
クルマはやはり、乗ってみないとわからない……。あらためて、そんな思いを強くしたのは、eKクロスEVの走りが想像を超えていたからだ。

想像どおりの美点は、パワートレインの完成度。加速フィールはモーター駆動車らしく、スムーズで心地いい。エンジン車では完全に払拭するのが難しい雑味が一切なく、アクセルペダルを踏み込んだときのスッキリとした感覚はさすが電動車といった仕上がりだ。
その上で印象的だったのは、加速の力強さ。なにしろ、最大トルクが195Nmとターボエンジンを搭載する一般的な軽自動車の2倍ほどあり、軽自動車の常識をはるかに超える力強さを発揮する。ちなみに195Nmという最大トルクは、2リッターの自然吸気エンジン車に匹敵するもの。しかも、エンジン車とは違ってアクセルペダルを踏み込んだ瞬間から厚いトルクが立ち上がるから、速い上に運転しやすい。
具体的にいえば、停止状態からの発進時や、バイパスなどへの合流時や追い越し時、そして、上り坂といったすべてのシーンで、一般的な軽自動車との違いを体感できる。eKクロスEVをドライブしていると、「軽自動車はパワー不足」という感覚が過去の話になったことを実感する。それくらい、軽自動車の常識を変える力強さなのだ。
そして、想像をはるかに超える美点は、ハンドリングフィールだ。EVがハンドリングに影響を与えるのか、といえば、答えはイエスである。
eKクロスEVで走りはじめ、交差点をひとつ曲がっただけで驚いた。スッと反応よく素直に曲がっていく感覚が、一般的な軽自動車、というよりも、一般的なすべての乗用車と比べて明らかに異なる。まるでスポーツカーのような気持ちのいいフットワークなのだ。軽自動車のハイトワゴンをドライブしていて、これほどの爽快感を味わえるなんて、試乗する前は夢にも思わなかった。
想像を超えた走りを実現できた背景には、いくつかの理由がある。
まずひとつは、ボディ剛性が高いこと。バッテリーを搭載するにあたって、車体下部を補強したのに加え、ボンネット内にもエンジン車にはない、左右をつなぐ補強部材が追加されている。それが強固なボディ剛性を生み出し、ハンドリングフィールを向上させているのである。
もうひとつは、フロア下へバッテリーを搭載することにより、重心が下がったこと。加えて、フロントからエンジンがなくなったことや、車体中央のフロア下にバッテリーという重量物が搭載されたことで、前後の重量バランスが整ったことも大きく効いている。
一般的な前輪駆動車の前後重量配分は、フロント65対リア35といったところ。車体のフロント側が重い分、スッと素直に向きを変える感覚をスポイルしている。しかし、eKクロスEVは前後重量配分は、45対55ほどとまるでよくできたスポーツカーのレベルにある。それが気持ちいいハンドリングに効果絶大なのだ。
クルマに詳しい人のなかには「フロントが軽い前輪駆動車は、発進時や加速時に前輪が空転しやすくなるのでは?」と思うかもしれない。しかしそこは、エンジン車にはマネのできないモーターならではの緻密な制御でしっかりフォロー。あらゆるシーンで最適なトラクションを生み出してくれるから心配は無用だ。
* * *
三菱自動車が世界に先駆け、量産EVのアイミーブを発売したのは2009年7月のこと。それから13年がたったいま、最新のeKクロスEVをドライブしてみて、三菱に先見の眼があったことを実感した。それとともに、軽自動車の常識を変えたEVの可能性を思い知らされたのも、また事実である。今後の軽EVのラインナップ拡充に期待が高まる。
●Mitsubishi eK X EV P
三菱 eKクロスEV P
・車両価格(消費税込):293万2600円
・全長:3395mm
・全幅:1475mm
・全高:1655mm
・ホイールベース:2495mm
・車両重量:1080kg
・駆動方式:前輪駆動
・電気モーター:交流同期電動機
・定格出力:20kW
・最高出力:47kW(64ps)/2302〜10455rpm
・最大トルク:195Nm/0〜2302rpm
・駆動用バッテリー:リチウムイオン電池
・総電力量:20kWh
・交流電力量消費率(WLTC):124Wh/km
・1充電走行距離(WLTC):180km
・サスペンション:(前)ストラット式、(後)3リンク式
・ブレーキ:(前)ベンチレーテッドディスク、(後)ドラム
・タイヤ:(前)165/55R15、(後)165/65R15
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