シトロエンらしさは健在? 新型「C5X」ガソリンエンジン仕様の実力とは? 遅れて来るPHEV版との違いは?
気持ちのゆとりをドライバーに持たせてくれる新たな旗艦
2022年10月1日から日本での発売がスタートするシトロエン「C5X」で、600kmほどのロングドライブに出かけた。PHEV(プラグインハイブリッド)モデルは遅れての上陸となるため、今回の試乗車はモーターを持たないガソリンエンジン仕様だ。その印象を先にフランスで試乗したPHEVとの比較を交えながらレポートしたい。

600kmのうち7割弱が高速道路、残りが一般道という今回のルート。走破してみてわかったのは、「いくつかの点においてはやっぱりPHEVの方が優れている」ということと、それでも「ガソリンエンジン仕様をチョイスしても後悔することはないだろう」ということだった。
C5Xという新しいシトロエンのフラッグシップの美点のひとつは、既存の定義にはめ込もうとすると悩んでしまうような不思議なスタイリング。なのに、なぜか惹きつけられてしまう魅力があることも、内包された室内が見た目以上にルーミーで使い勝手がよさそうだということも、前回のPHEV版のレポートで触れている。そのあたりの印象は、今回ロングドライブを経験してもまったく変わらなかった。
つけ加えるならば、ボディカラーが控えめだったにもかかわらず、高速道路のパーキングエリアや路上で想像以上に目立っていた、ということ。まだ街を走ってる個体が少なく、珍しいからということもあるだろうが、交差点で停まっていて二度見、それも二度目はガン見されるということが何度かあり、妙にくすぐったい気持ちになった。
全長4805mm、全幅1865mmというC5Xの車体は、日本の道路事情にあってはコンパクトな部類とはいえない。しかし運転感覚的には、レクサス「ES」やメルセデス・ベンツ「Eクラス」、アウディ「A6」あたりと同じくらいに感じられる。異なるのは、全高が1490mmもあり、視界がやや高いくらいなものだ。もちろん個人差はあるだろうが、僕自身はそれほど違和感もなければ難儀したりもしなかった。
C5Xの最小回転半径は5.6mと、これまた小回りが効く部類じゃないが、ドイツ勢はともかくとして、レクサスのESが5.8〜5.9mだということを考えると、ずいぶんマシに思えてくる。360°ビジョンのカメラとモニターがあることも要素としては大きいが、僕個人としてはターンする際も駐車場にクルマを停めるときも、ボディの大きさが気になることはなかった。
前回のPHEVのレポートでは触れなかったが、実はインテリアについても好印象を抱いている。水平基調のダッシュボード、色合いの落ち着いた木目調パネル、トーンがケンカしない異素材どうしやカラーどうしの組み合わせなどなど、かなり視界に優しいコックピットである。実はこうした要素は、ロングドライブのときには結構、ドライバーの疲れ方を左右する。シトロエン=奇抜というイメージを抱く人もいるかもしれないが、そういうわけでもないのである。
こと“快適”という点において重要なのは何か。それは居住空間を小うるさいほど華やかに演出することではなく、人の気持ちの奥にある感覚に寄り添うことだ、というのをシトロエンはよーくわかってるのである。300kmを越えたあたりで「この先さらに200km走れっていわれても楽勝でいけちゃうな」と感じたが、それはこの室内空間が醸し出す優しさも大きく貢献してるに違いない。

ここまでは、すべてのC5Xに共通する魅力。その上でPHEVとの大きな違いは、今回の試乗車のパワートレインがモーターのない1.6リッター4気筒ターボであること、そして昨今の上級シトロエンではおなじみの、新世代“液体系“サスペンションである“プログレッシブ・ハイドローリック・クッション”こそ採用されるものの、電子制御式の“アドバンスト・コンフォート・アクティブ・サスペンション”は備わっていないことだ。
こう書くとガソリンエンジン仕様は廉価版のように感じられるかもしれないが、そういうわけじゃない。C5Xはシトロエンの新世代フラッグシップとして生み出されたモデルだから、そもそも廉価版をしつらえるという発想など開発に携わった誰の頭の中にもなかったことだろう。こちらはこちらで現代のこのクラスに求められる基本性能をしっかり確保しているし、十分にシトロエンらしい乗り味を提供してくれるのだ。
1.6リッター4気筒ターボは、最高出力180ps/5500rpm、最大トルク250Nm/1650rpmを発生する。その数値から「もしかしたら力とスピードが足りないんじゃないか?」なんて予想していたのだが、いざ走り出してみたらまったく不満は感じられない。停止状態からほとんどスタートした直後のあたりで250Nmという最大トルクを生み出し、205/55という比較的おだやかながら径は大きい19インチの前輪がその力をしっかり路面へと伝えるから、クルマはスルスルと速度を上げていく。回せば回したで室内の静けさの向こう側から心地いいサウンドを控えめに聞かせながら、望外に元気な加速力とスピードを提供してくれる。
もちろん、すごく速いかといえばそんなことはない。81psと320NmのモーターがアシストするPHEVに匹敵するかといえば、そんなこともない。けれど、一般的な尺度からいうなら加速もスピードも十分以上。何よりC5Xというクルマは、エンジンの回転を上げずにたゆたうようにしておだやかに走ってるときこそ、もっとも心地よさを強く感じられるクルマであって、まったく飛ばそうという気にさせないところがある。やればできるけど、やらなくてすむならやらない。そうした気持ちのゆとりをドライバーに持たせてくれるのだ。そんなところもパフォーマンス不足を感じさせない要因なのかもしれない。それだから、PHEVとの動力性能的な違いはあまり感じられなかった。というよりも、さほど重要なことであるようには思えなかった。
ただ、ガソリンエンジン仕様で少し引っかかったことは、渋滞の中など微速と停止を繰り返すような走り方を強いられるとき、ごくたまにエンジントルクとトランスミッションの制御とスタート&ストップシステムが自己主張し合うような感じで微妙にギクシャクした動きを見せたこと。これは、微速域のほとんどをモーターが担うPHEVでは一度も感じなかったものだ。助手席の人は何も感じなかったというから僕が神経質なだけなのかもしれないけど、この点がもう少し洗練されたらいいな、と思ったのは正直なところである。
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