「今年度は日本車が強い!?」 2022-2023日本カー・オブ・ザ・イヤー「10ベストカー」本当の実力を確かめる
日産車の躍進が目立った今年度の10ベストカー
今年度のCOTYは10ベストカーに3モデルが選出されるなど、日産車の復権が目立った。
●日産「エクストレイル」 予備知識なく試乗したらEVだと勘違いしそう

新型「エクストレイル」の魅力の大部分を占めるのが、e-POWERとVCターボエンジンを組み合わせた新しいパワートレインだ。
エンジンで発電した電力でモーターを駆動するe-POWERが登場したのは2016年。コンパクトカーの「ノート」に搭載された初期型e-POWERは電動駆動フィールという点ではキラリと光る部分があったが、加速時のレスポンス遅れや盛大なエンジンノイズといった課題を抱えていた。「充電のいらないEV」と日産はアピールしたが、「いやいや、充電できないハイブリッドでしょ」と突っ込みを入れてたことを思い出す。しかしe-POWERは、新型ノートになって大幅に進化。前年度のCOTY獲得につながった。
そして新型エクストレイルでは、可変圧縮比エンジンであるVCターボとタッグを組むことでさらなる進化を遂げてきた。驚くのはエンジンの存在感の薄さで、なんの予備知識もなくディーラーの周りを試乗してみたら、EVだと勘違いしてしまう人もいるだろう。
フル加速時、エンジンは低圧縮比のパワーモードに切り替わり回転数も高まるが、それでも不快な騒音や振動は皆無。1.5リッターの3気筒エンジンとは思えない洗練度と頼もしい加速を生み出す。“試乗して驚くカー・オブ・ザ・イヤー”という賞があれば、新型エクストレイルは受賞の最有力候補だ。
●日産「サクラ」/三菱「eKクロスEV」 軽自動車の常識を破る質感と走り

ユーザーのEVへの関心度アップと手厚い補助金に支えられ、すでに4万台を超える受注を獲得した日産の「サクラ」と三菱の「eKクロスEV」。僕が高く評価しているのは、第1にクルマとしての完成度の高さ。第2に現在のEVの在り方に一石を投じるコンセプトだ。
まずは前者だが、ひと言でいえば「軽自動車の常識を破る実力の持ち主」ということになる。eKクロスEVはエンジン車版とほぼ同じだが、専用の内外装が与えられたサクラの静的質感は、軽自動車の常識を破る水準。乗ってみても、加速性能、登坂性能、静粛性、振動の少なさ、なめらかな加速フィール、運転のしやすさなど、さまざまな項目で従来の軽自動車の常識を覆してみせる。
次に後者だ。バッテリー容量はEVとしては小さめの20kWhで、航続距離は180kmにとどまる。昨今のバッテリー容量競争、航続距離競争の中においては物足りなく感じてしまいがちだが、そういう競争とはあえて距離を置いたのが、税込みで230万円台からという価格を実現できた最大の理由だ。
たしかに長距離ドライブでは心許ないが、軽自動車の本質である街中メインの近距離ユースであれば、180km走れば十分だと思う。ガソリン車の置き換えとしてのEVではなく、EVの長所と短所を冷静に見極めた上で、皆が買えるEVに仕上げてきたことがサクラとeKクロスEVの魅力であり、ヒットの理由だ。
●日産「フェアレディZ」 85%のパーツを新設計したフルモデルチェンジ

「フェアレディZ」も今年度の10ベストカーに選出された。昨年度、トヨタ車3台が10ベスト入りしたが、日産車がそれを成し遂げたのは快挙といえる。それほどまでに、日産の商品づくりが充実してきているということだろう。
新型フェアレディZの車両型式名は、先代のZ34型から引き継ぎRZ34型としているが、これは「マイナーチェンジなので投資は少ないです。だからやらせて下さい」という社内説得のためだったとか。実際は85%のパーツを新設計したフルモデルチェンジであり、ボディ剛性は大幅に向上。エンジンも「スカイライン400R」と同じ3リッターV6ターボになり、乗り心地を含めた総合性能は格段に向上した。
18インチタイヤを履く6速MT仕様は荒れた路面での減衰の甘さとゴリッとしたシフトフィールが少し気になった。その点、19インチのAT仕様は素晴らしく洗練されたスポーツカーフィールを提供してくれる。ただし、19インチ仕様にはもれなくリアスポイラーがついてくるのがちょっと残念……などと、購入を前提にした評価をしてしまうほどに魅力的な1台である。
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