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フィアットの新型ミニバン「ドブロ」 人気のリフターやベルランゴと何が違う? デザインだけじゃない3モデルの差異とは

ドブロのコーナリングはフィアットらしい曲がり方

 ホントだったら、今回のレポートはここで「以上!」となるところだったのです。走り出してみるまでは。

プジョー「リフター」やシトロエン「ベルランゴ」と基本設計は同じながら、イタリア車らしいデザインと走り味を楽しめるフィアット「ドブロ」
プジョー「リフター」やシトロエン「ベルランゴ」と基本設計は同じながら、イタリア車らしいデザインと走り味を楽しめるフィアット「ドブロ」

 だって、基本構造同じ、基本メカニズム同じ、車重も似たレベル。先に上陸してるリフターとベルランゴをそれぞれ結構な距離ドライブしてきた筆者としては、間違いなくよく走るだろうと予想はしても、それを超える過大な期待などはしたりしないわけです。ドブロは、そういう意味では間違いなくよく走ってくれます。リフターやベルランゴと同じくらいに。

 発進の段階から力強く、いかなるときにも力不足など感じることなく、速度の伸びもよく、扱いやすい。この名機というべきターボディーゼルを積んだ3台の走りの出来のよさに、あらためて感服させられました。これはもうピッタリ予想どおり。

 予想や期待を超えてたのは、そのドライブフィールでした。走りの味つけ、といった方がいいのかもしれません。

 例えば、プジョーがリフターにスポーティ&コンフォータブルな乗り味を持たせ、シトロエンがベルランゴを魔法のカーペットのような優しくフラットな乗り心地に仕立てたように、ドブロは最初のコーナーを曲がりながら「えーっ!?」と声が出ちゃったくらい、フィアットらしい曲がり方を味わわせてくれたのです。これが本当にうれしかった。

 ドブロの乗り味はプジョーと同じように、スポーティ&コンフォータブルなのです。しかし、ここはとても感覚的なところなので言葉で説明するのは難しいのですが、プジョーがしなやかな筋肉とよく動く関節で曲がっていくようなところがあるとすれば、フィアットは体幹と腰で曲がっていくような感じ。また、プジョーが前輪駆動なのに後輪が車体をラインに載せていくようなところがあるとすれば、フィアットは前輪が反応した瞬間に後輪も反応してフロントからグイグイ食い込むようにして曲がっていくようなフィーリングなのです。

 ひと言でいうなら、ドブロのコーナリングはめちゃめちゃフィアットらしい曲がり方なのです。背の高いクルマだというのに、そこがものすごく楽しく、ものすごく気持ちいいのです。

 そうした似て異なる味つけが、同じ基本構造の中にもきちんと盛り込まれているのですが、あらためて申し上げておくと、3台はスポーツモデルでもなんでもなく、あくまでもMPV。人によってはミニバンと呼ぶカテゴリーのクルマなのです。その乗り味をフツーここまでキッチリとつくり分けますか? こうしたところにブランドとしての誇りを見たような気がします。

* * *

 ちなみにドブロの価格設定は、スタンダードボディの5人乗りが399万円(消費税込、以下同)、ロングボディの7人乗りが429万円です。昨今の素材や輸送費の高騰ぶりを知ってると、ものすごくがんばった値づけであることが分かるのですが、そうでない方には少しばかり高価に感じられるかもしれません。

 でも、考えてみてください。国産の某MPVに先進安全装備をオプションで装着していくと、500万円を超えちゃうのです。どうでしょう? ドブロ、良心的な値づけだと思いませんか? そうでなくても、走りの楽しさにかけては、おそらくMPV系の中では随一。ドブロは根本的な部分からして、お買い得だと思うのです。

●FIAT DOBLO
 フィアット ドブロ
・車両価格(消費税込):399万円
・全長:4405mm
・全幅:1850mm
・全高:1800mm
・ホイールベース:2785mm
・車両重量:1560kg
・エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
・排気量:1498cc
・変速機:8速AT
・最高出力:130ps/3750rpm
・最大トルク:300Nm/1750rpm
・駆動方式:FWD
・サスペンション:(前)ストラット式、(後)トーションビーム式
・ブレーキ:(前)ベンチレーテッドディスク、(後)ディスク
・タイヤ:(前)205/60R16、(後)205/60R16

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