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モータースポーツで「快進撃」! ヒョンデのスポーツブランド「N」は市販車も速くて楽しい!! リーダーが語る「躍進の原動力」とは【Behind the Product #10】

プロジェクトリーダーが語る「N」ブランド誕生の背景

 そんな「ニュルブルクリンク24時間耐久レース」のパドックで、「N」ブランドを牽引するジューン・パーク(JooN PARK)氏に話をうかがいました。

量産車ベースのマシンで争われるモータースポーツの世界で快進撃が続くヒョンデのスポーツブランド「N」
量産車ベースのマシンで争われるモータースポーツの世界で快進撃が続くヒョンデのスポーツブランド「N」

 まず聞きたかったのは、「N」ブランドのルーツとなるニュルブルクリンクに彼らがこれほどまでこだわる理由です。

「R&Dセンターだけでテストするのではなく、サーキットで実際にテストをしてユーザーに届けることが、スポーツブランドの使命だと考えます。

 その中でも、ニュルブルクリンクは非常に重要な場所です。なぜなら、こんなコースは世界中探してもほかにありませんからね」

 つまり、「ニュルブルクリンク24時間耐久レース」への挑戦も、開発の場として認識しているのでしょうか?

「そのとおりです。ちなみに『N』初の量産モデルである『i30N』は、2016年にエンジン、2017年には車両全体のテストのために参戦していました。もちろん外観は、ノーマルの『i30』に見えるようカモフラージュしていましたけどね」

 そもそもヒョンデは、なぜ「N」ブランドを立ち上げようと考えたのでしょうか?

「2013年に、我々は2020年までの戦略を描き、報告書を作成しました。そのときに『ドイツ市場で最初に成功しなければダメだ』と書いたのです。

 ドイツ市場はホットハッチのマーケットとして一番熱いマーケットです。当時の同僚は、ドイツはフォルクスワーゲンの『GTI』やメルセデス・ベンツの『AMG』、そしてBMWの『M』の国だから、ヒョンデなんて相手にされないよといってました。僕はそれに腹が立ち、なんとかするためにドイツの拠点へと移籍したのです」

 なるほど、そういう経緯があって、「N」ブランドは開発のトップにドイツ人のエンジニアであるアルベルト・ビアマン氏を起用しているのですね。

「彼はドイツにおける“おじさん”のような存在です(笑)。

 実は先ほど話した報告書の中で、『AMGかMの開発トップを務めた方に依頼すべきだ』と書きました。僕は彼のキャリアをよく知っていたので声をかけ、そして、ハイパフォーマンスカーの計画があることを話すと、彼は『ちょっと冒険してみよう』といってジョインしてくれたのです。

 そこから今まで、いっしょにいい仕事ができました。あのときの決断は間違っていなかったと思います」

 現在、「N」ブランドのモデルは、エンジン車とBEVの2本立てとなっています。将来そこに、ハイブリッド車が加わる可能性はないのでしょうか?

「未来の話はまだナイショです(笑)。ただひとつだけヒントをいうと、カスタマーの方々といっしょに楽しめるようなモノをつくりたいと考えています。『アイオニック5 N』は価格が少々高いので、その辺りも考慮はしています」

●レースと市販車は密接にリンクしていくべき

「アイオニック5 N」の試乗会の際、ジューンさんは「このモデルはハイパワーBEVではなく、パフォーマンスBEVです」と教えてくれました。

 そのクルマを用いて、ドリフト、ワンメイクレース、そしてヒルクライムと矢継ぎ早に多彩な活動をおこなっています。その一番の理由はなんなのでしょうか?

「現在、BEVはステップbyステップの段階で進化している状態なので、ユーザーの方々にBEVの可能性を制限なしに見せたいという思いがあります。そのために僕らはさまざまな挑戦が必要です。日本流にいえば“道場破り”のような感じでしょうか」

「ニュルブルクリンク24時間耐久レース」の予選後におこなわれたドリフトショーでは、エンジン車に混ざってドリフトを決め、ファンも大喜びでした。

「ドリフトが上手く決まらない回もありましたが、問題ないと思っています。常にチャレンジ、常にトライ&エラーで、それを元にカイゼンしていくことが大事だと考えています」

 そんなヒョンデの「N」が、次に見据えている挑戦はなんなのでしょうか? 例えば、ラリーとかなのでしょうか?

「常に挑戦していく考えなので、その可能性もゼロではないとだけいっておきます(笑)。

 周りからはクレイジーといわれるかもしれませんが、この挑戦から生まれる『N』ブランドの楽しいクルマをカスタマーの方々へとお届けすることで、ヒョンデ全体のブランドイメージを向上させることが使命だと認識しています」

 一部には、「ヒョンデがF1に参戦か!?」といった報道もありますが、そのウワサの真相は?

「それについては何もいえません。ただ個人的な意見をいわせてもらうと、『N』ブランドはモータースポーツシーンとプロダクションカーが密接につながっている存在であるべきだと考えています」

「N」ブランドが世に浸透し始めている一方、ヒョンデ社内には理解を示さない人もいるかと思います。そんなときにジューンさんはどのような説得をおこなっているのでしょうか?

「それはとても大変なタスクです。ヒョンデには“普通の人”が多いので、僕がアイデアを持っていくと『君はクレイジーだ』、『辞めた方がいい』と何度もいわれました。でも僕は、正しいことだと信じていましたので、あきらめずに進める……これに尽きます。

 会長のサポートこそありましたが、決して楽な道のりではありませんでした。でもアンケートを取ってみると「『N』ブランドはヒョンデに大きなインパクトを与えた」という声が多いことに驚いています。それでも僕はハングリーなので、現状にはまだまだ満足していませんよ」

 そんなジューンさんは、今後『N』ブランドをどのように成長させていこうと考えているのでしょうか?

「クルマ好きの中には、僕らのチャレンジに理解を示してくれる人が増えていますが、それでもまだまだだと僕は思っています。

『N』のファイティングスピリット、勝つためのスピリット、コンペティションへのスピリットはまだまだ浸透していませんので、ヒョンデ全体に広めていくことが僕のミッションだと考えています」

 ジューンさんの話を聞いていると、「N」の歩みはトヨタ自動車の豊田章男会長が2007年にGR(TOYOTA GAZOO Racing)を立ち上げたときとよく似ているように感じました。

「確かにそうかもしれません。章男さんは“モリゾウ”というニックネームを使ってさまざまなエクスペリエンスをおこなったことで、いいブランドを打ち出せたと思っています。

 いつかビジネスではなくクルマ好きのひとりとして、ゆっくりと話をしてみたいですね。章男さんは僕の中の“ヒーロー”なので」

* * *

 ヒョンデの「N」ブランドは、今、すべてにおいて“勢い”があることをリアルに実感しました。

 世界の自動車ブランドにはさまざまなスポーツブランドが存在していますが、特に日本車メーカーとっては「N」のスピード感やハングリー精神、そしてパッションは“脅威”といえるかもしれません。

 日本では韓国車に対して“フィルター”をかけて見る人が多いのですが、彼らが世に送り出した「アイオニック5 N」は「ヒョンデは嫌いでも『N』は好き」という存在になれると筆者は信じています。

Gallery 【画像】「えっ!…」これがレースの世界で快進撃を続けるヒョンデのスポーツブランド「N」です(31枚)

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