「名門アルピナ」はBMWと何が違う? 一番の魅力はコンパクト系!? 462馬力の“直列6気筒ターボ”を積む「B3ツーリング」に乗って考える
同乗者にGを感じさせない“大人のブレーキング”も可能
「B3ツーリング」の走りは、絶対的なパフォーマンスとして見るとものすごく高いレベルにありますが、乗っている限り、いい意味でスポーツ一辺倒ではありません。

例えが正しいかは分かりませんが、アドレナリンが湧くようなワクワク感ではなく、むしろより冷静にクルマと向き合えることに対し、うま味を感じるハンドリング、という印象。すべてに雑味がない上に、人によらず、路面を選ばず、環境を問わない懐の深さを具現した、まさに理想形と呼べる仕上がりです。
乗り心地は、20インチタイヤを装着していることを忘れるくらいのしなやかな足さばき、とにかくカドが立ってない路面からの入力の伝わり方、人間の波長に合った減衰のさせ方(少しだけ時間をかけて収束する)などにより、快適性はすこぶるハイレベルです。
もちろん、かつてのアルピナと比べるとソリッドな感じは強いかもしれませんが、この辺りはエンジンパフォーマンス向上に合わせた最適化だと考えれば納得できるレベルでしょう。
ちなみに「B3ツーリング」の乗りは、ドライビングモードによって特性が変わりますが、乗り比べて分かったのは、ボディコントロールと入力に対する収束の時間が異なるくらいで、実は足のセットアップは基本的にはひとつだけということ。速度域や用途に合わせ、塩コショウの振り方をアジャストしているだけだと分析しています。
この辺りはサスペンションチューニングのみならず、AWD制御(BMW「M340i」よりリア寄りなものの、「M3」「M4」よりもトラクション重視)、ボディ(変更アナウンスはないものの組みつけ順序などの違い、もしかしたら別の車種用を用いて力を抜く工夫をしているのかも⁉)、ホイール、ブッシュなど、総合的なバランスによって成り立っているのでしょう。
ちなみにブレーキは、絶対的な制動力が申し分ないことはもちろんのこと、それよりもスポーツブレーキであることを感じさせないやわらかなタッチと、よりミリ単位の繊細な操作が可能なコントロール性の高さに驚かされます。これなら同乗者にGを感じさせない“大人のブレーキング”を、誰でも簡単におこなえると思います。
●アルピナの真髄はハードではなくソフトにある
そろそろ結論にいきましょう。
総じていうと、当然、「B3ツーリング」はアクセルペダルを踏めばハイパフォーマンスなのですが、それよりもゆっくり走っている際の心地よさや気持ちよさが格段に高いレベルにあります。要するに、「駆け抜ける喜び」だけでなく「駆け抜けない喜び」も身につけているのがBMWアルピナなのです。
加えて、ゆっくり走っているときと飛ばしているときとのドライブフィールにズレがないので、常に冷静でいられるのもBMWアルピナの美点です。
ちなみに、高速道路やワインディングでたまにBMWアルピナ車を見かけますが、そのほとんどはジェントルに走っています、目を三角にして飛ばさなくてもクルマのうま味が十分に感じられるのと、常に冷静な気持ちでステアリングを握れることから、「ドライバーの心にも余裕があるんだろうな」と思います。
冒頭、筆者は「事業形態が変わってもアルピナの名にふさわしいクルマづくりは必ず継承される」と書きましたが、その意味をお分かりいただけたでしょうか?
アルピナの真髄はハードではなくソフトにある、つまり「ブレない味つけ」にこそあると筆者は考えます。
アルピナが目指す走りとは、より速く、より快適に、より遠くに、より安全に、より愉しく……を実用域から超高速域までハイレベルで実現させる「究極のグランドツアラー」だと思います。
その実現のための手段が、BMWのリソースの上手な活用であり、「どうしてもこれは!!」という部分にのみ、独自のアイテムを投入しているのです。ちなみにアルピナがBMWのアイテムを使う理由は、認証の取りやすさや信頼性が高いから、だそうです。
アルピナはBMWを最もよく知る「目利き」であると同時に、そのパーツを自由自在に活用することで、秘められた潜在能力を引き出すことができる敏腕シェフといえると思います。
今回は「B3ツーリング」を例にレポートしましたが、他のアルピナ車が必ずしも同じ変更点、パーツ、手法を採用しているわけではありません。どうやら素材に対して、それぞれ最適な調理方法がアルピナにはあるようなのです。
ひとつ心配事があるとすれば、「ブレない味つけ」を元にアルピナを生み出してきたシェフたちが、2025年以降の“新生アルピナ“にどのようなカタチで関わるのか……ということでしょう。
現時点ではその辺りのことは全く分かりませんが、BMWもアルピナというブランドを引き継ぐ上で、ちゃんと理解していると信じています。
そしてもうひとつの心配は、BMWグループ内での新生アルピナのポジショニングです。BMWは「自社のラグジュアリーカーをより多様なものとする」と語っているので、おそらくアルピナはBMWとロールスロイスの間に位置することになると思いますが、「高級ブランド=大型モデル」が主流となるのは、個人的にがイヤだな……と思います。
アルピナにもBMWの大型車をベースとするモデルが存在しますが、やはり真髄は「3シリーズ」「4シリーズ」をベースとするコンパクトなモデルでしょう。この辺りについて、BMWグループがどのようなかじ取りをしていくのか? 個人的にも非常に気になる部分ですが、数年後も「相変わらず、アルピナは違うよね!!」といった記事を書けるといいな……と思います。
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