なぜ“四半世紀”も続いてる? ポルシェ「911」だけで争われる“日本最速のワンメイクレース”「ポルシェ・カレラカップ」の醍醐味とは?【クルマ×アソビ#23】
北米や英国に先駆けて開催された「ポルシェ・カレラカップ・ジャパン」とは
なぜポルシェは、自動車愛好家たちを魅了し続けるのでしょう? その理由のひとつが、モータースポーツでの輝かしいヒストリーではないでしょうか。

1951年、ポルシェは「356」で参戦した「ル・マン24時間耐久レース」でクラス優勝に輝いて以来、全世界のモータースポーツシリーズで実に2万8000を超える栄冠に輝いています。
また、レース参戦で培われたノウハウは「911」を始めとする市販モデルへとフィードバック。常にスポーツカー・リーグをリードする存在であり続けていることも、ポルシェの大いなる魅力となっています。
こうしたモータースポーツとの密接な関わりは“ポルシェらしさ”の象徴でもありますが、その一環として、「911」による公式ワンメイクレースが世界各国で長年、開催され続けています。
このワンメイクレース、正しくは「ポルシェ・カレラカップ」といい、ドイツ本国では“タイプ964”時代の1990年にスタート。その後、ベースモデルは最後の空冷エンジンモデルである“タイプ993”、初の水冷エンジンを搭載する“タイプ996”などへと進化していきます。そして“タイプ996”の時代に、現在の「カレラカップ」シリーズ用マシンの源流となる「911 GT3カップ」が用意されたのです。
この“タイプ996”の時代である2001年に、日本を舞台とする「ポルシェ・カレラカップ・ジャパン(PCCJ)」がスタート。現在、北米や欧州など世界19の国と地域で開催されるまでに成長した「911」によるワンメイクレースですが、国際シリーズを除くと、日本は北米やイギリスに先駆けて開催されたという歴史を持つのです。
それから今日に至るまで、PCCJは休止や中断もなく開催され続け、今年2025年には記念すべき25年目のシーズンを迎えることに。“日本で最も長い歴史を持つワンメイクレース”としても知られています。
そんな2025年シーズンのPCCJは全11戦を開催。これまで第1-2戦の鈴鹿、第3-5戦の岡山国際、第6-7戦の富士、第8-9戦の菅生でのレースを終え、フィナーレを飾る第10-11戦は9月26日と27日に富士スピードウェイで開催されます。
各レースは、F1やスーパーフォーミュラといったレースとともに開催。第10-11戦は「FIA世界耐久選手権」と合わせての開催となります。
現在のPCCJは、プロクラス、プロアマクラス、アマクラスの3クラスが混走。2025年シーズンは計16台がエントリーしています。ちなみにマシンは、2022年から“タイプ992”の「911GT3カップ」が使用されています。
最新の「911GT3カップ」は、510馬力を発生する4リッターの自然吸気式フラット6エンジンを搭載。「911GT3」に比べて180kgほどの軽量化が図られています。
イコールコンディションを厳格に保つべく、エンジンやトランスミッション、ショックアブソーバーは封印されており、改造や変更は一切認められていません。
「911GT3カップ」は市販車ベースのマシンながら、その性能は驚異的。実際、富士スピードウェイでのコースレコードは1分39秒台をマークします。
同サーキットにおける「SUPER GT」GT300クラスのレコードが1分34秒台、「スーパー耐久シリーズ」のST-Xクラスが1分38秒台であることを考えれば、そのパフォーマンスの高さをお分かりいただけると思います。
そうPCCJは、長い歴史持つことに加えて“世界最速・日本最速のワンメイクレース”でもあるのです。
ちなみに、エントリーしてみたいという方にお伝えしておくと、マシンの価格は3500万円ほど。購入はレース参戦が前提となっており、車両代のほかエントリーフィーやご自身のチームの運営費用も必要となります。
そのため、トータルでは相応の予算が必要となりますが、車両はおよそ3~4シーズン使用できる上、新しいマシンがリリースされても下位クラスや「スーパー耐久」など他レースへのエントリーも可能。さらに、海外から売却に関する引き合いも多いとのことです。
●レースに携わるスタッフが語るPCCJの醍醐味とは
さて、日本における歴史はもちろんのこと、マシン性能やサポート体制もワンメイクレースとしては群を抜くPCCJですが、それを主催するインポーター側の困難や苦労は相当のものだと推測されます。
そこで、PCCJを熟知するおふたり、ポルシェジャパンマーケティング部の伊藤康祥モータースポーツマネージャーと広報部の木内洋治マネージャーに、ポルシェが日本でワンメイクレースを展開し続ける目的やシリーズの醍醐味についてうかがいました。
まず、黎明期からPCCJに携わってきた木内さんは、その魅力を次のように話します。
「『カレラカップ』は、エンジンやミッションを始め、車両に手を入れられる範囲が極めて小さいのが特徴で、タイヤもワンメイクという徹底ぶりです。カップカーはとても高性能ですが、全車イコールコンディションのため、まさにドライバーのテクニックで勝負が決するレースになっています」
実際、参戦するチーム側で手を入れられるのは、足まわりのアライメントやリアウイングの角度、ブレーキバランスといったセッティングの範囲内に限られています。つまり、タイムはドライバーの腕次第、というわけです。
このストイックさに魅了されるエントラントも少なくないと、伊藤さんは続けます。
「PCCJには10シーズン以上連続して参戦されているベテランのドライバーもいらっしゃるのですが、その方が参戦し続ける理由について『簡単には勝てないし、勝てなくてもいい。とにかく乗っていると本当に楽しいんだ』とおっしゃっていたのが印象的でした。
一方、PCCJで腕を磨かれる方も多いんです。ここでレースに魅了され、『SUPER GT』やフォーミュラレースへとステップアップしていくドライバーも多数いらっしゃいます」

ポルシェジャパンはPCCJと並行して、有望な若手ドライバーを支援するスカラシッププログラムを実施しています。卒業生には、ハースF1のリザーブドライバーで「WEC(FIA世界耐久選手権)」のハイパーカーをドライブする平川亮選手を筆頭に、「SUPER GT」のGT500クラスで活躍する笹原右京選手や大草りき選手、2024年シーズンにGT300クラスでチャンピオンに輝いた元嶋佑弥選手など、トップドライバーたちが名を連ねています。
興味深いのは、「SUPER GT」カテゴリーへと進んだ、とあるドライバーのコメント。そのドライバーによると、空力性能で勝るGTマシンより「911GT3カップ」の方が“乗りこなしがい”があるというのです。上手く乗りこなせればGT300のマシンに肉薄するポテンシャルを発揮するカップカーですが、一筋縄ではいかない面もドライバーの向上心を刺激するのでしょう。
「このレベルの高さこそが、ドライバーにとっての『カレラカップ』の醍醐味なんだと思います。ハイレベルのレースで勝つということは、上位クラスを目指すドライバーにとってスキルの保証にもなりますし、ジェントルマンドライバーにとっては素晴らしいステータスとなるのです。
参加される方の目標や目的はさまざまですが、皆さん真剣に『カレラカップ』を楽しんでいらっしゃるのです」(木内さん)
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