まもなく生産終了のトヨタ「GRスープラ」最終モデルの実力とは? モデル末期とは思えない“商品改良”でさらに進化! “抜群のドライビングプレジャー”は健在です
モデル末期でも完成度を高めることに注力
あの復活劇から6年。ついにトヨタ「GRスープラ」とのお別れが近づいてきました。先ごろトヨタ自動車のスポーツ車両部門であるTOYOTA GAZOO Racing(以下、TGR)が、「2026年3月をもって『GRスープラ』の生産を終了する」と正式発表したのです。

その集大成となるのが、世界限定300台、日本向けは150台限定となる「A90ファイナルエディション」。ノーマルモデルでは387psのエンジン最高出力が441psまで引き上げられていると聞けば、その本気度と特別感を実感できることでしょう。
しかも、設定されるトランスミッションは6速MTのみと硬派。まさに“メーカー謹製チューニングカー”と呼べる仕上がりです。
しかし、筆者(工藤貴宏)がTGRの貪欲な姿勢を感じとったのは、むしろ6気筒エンジン搭載のノーマルモデルに施された改良メニューでした。販売終了が迫り、わずか1年ほどのセールス期間であるにもかかわらず、多岐に渡る改良を施しているからです。
赤いシートベルトなど、各部にレッドのアクセントを配したインテリアや、マットブラックに塗られたホイールなど“見た目”も変更されているのですが、先の商品改良メニューのほとんどは、走行性能アップのためのもの。
ブレーキの大径化に始まり、補強材の追加やマウント部のゴム硬度アップといった車体剛性の向上、前後キャンバー角の変更や電子制御ダンパーの特性変更といったサスペンションのリセッティング、さらに、アクティブディファレンシャルやESP(スタビリティコントロール)の制御の最適化など、モデル末期とは思えないほどの手が加えられています。
またスタイリングにおいても、フロントタイヤスパッツの拡大やフロントのホイールアーチフラップ追加、さらに、ダックテールタイプのカーボンリアスポイラー採用といったトピックが。しかし、それらはすべて“空力性能アップ”という目的から採用されたもので、見た目を変えるための装備ではないのです。
では、なぜこれほど多岐にわたる改良が加えられたのでしょう? わずか1年しか販売できない、しかも、多くの台数が見込めないモデルなのに……。それは純粋に、“現行モデルの完成度を高める”という愚直な理由以外の何物でもありません。「最後まで進化の手はゆるめない」。今回の改良メニューを見ると、このモデルに携わった開発陣の気迫が伝わってきます。
そんな“最後”のA90型「GRスープラ」でワインディングへと出かけてみました。
筆者はもちろん、改良前のモデルにも試乗していますが、今回、最新モデルに乗ってみて、その進化をしっかりと感じとれたかといわれれば「イエス!」と即答するのは難しいのが正直なところ。ワインディングロードで走らせる限り、従来モデルとの明確な違いを感じ取ることはできませんでした。
なぜなら、そもそも「GRスープラ」は走行性能が高すぎるモデルだから。筆者が少しくらいムチ打って走らせたくらいでは、秘めた能力のほんの一部しか感じ取れないのです。「GRスープラ」はそれほどまでにハイレベルなモデルなのです。
とはいえ、俊敏かつ安定感のあるハンドリングや、接地性が高くてひたすら安心できるコーナリング、さらには、車体の大きさを感じさせない人馬一体感など、走りの素晴らしさはしっかりと味わえました。
クルマとの一体感が強く、ドライバーが思い描く走りを実現してくれる、イメージどおりに走ってくれるのが印象的。試乗を終えるころになって「最新型は従来モデルに比べて、そうした感覚がひときわ強まっているかも」と思えてきました。
もちろん、サーキットのように限界の挙動を感じられるステージでは、新旧の違いをより明確に感じとれることでしょう。
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