「フランスの新鋭ブランド」による“Cセグメント”ハッチバックはルックスがスゴい! 派手じゃないのに目を奪われるDS新型「N°4」の進化と真価
“知る人ぞ知る”フレンチラグジュアリーの美学
先日、日本に上陸したばかりのDS「N°4 ETOILE HYBRID(ナンバー フォー エトワール ハイブリッド)」に試乗して、メジャーな存在であることとクルマ自体に魅力があるか否かというのは、必ずしも一致しないものだと改めて実感させられました。
ここ日本では今ひとつ認知度が低い気がしてるのですが、フランスのDSが手がけるクルマはいずれも独特の美意識にあふれていて、その世界観を一度でも知ってしまうと、気持ちがやんわりと絡み取られてしまうような魅力を放っています。
けれど、「DS STORE」と名づけられた販売拠点は現時点で全国に13店舗しかなく、インポーターであるステランティスジャパンもDSを特別なブランドと位置づけてることからガツガツ売り急ぐようなことはしておらず、なので、街中でその姿を見かけることも多くはありません。つまり、DSブランドのクルマを見たり触れたりする機会自体が少ないわけですね。僕(嶋田智之)の友人や知人にも「DSって何?」という人が思いのほか多くいて、世の中的にも本当に“知る人ぞ知る”ブランドであるように思います。
実際、DSは、いうなれば“フランスの自動車メーカーが、フランス人(とフランス好き)のために、フランス流の美意識をたっぷり込めてつくるプレミアムブランド”のようなものなのです。
当時の先進技術と自分たちの美学を注ぎ込んでつくり上げた、1955年発表の歴史的な名車であるシトロエン「DS」を精神的な支柱とし、“ワン&オンリー”であることを重んじるフランスらしい独創的なデザインと技術、そして“サヴォアフェール”──日本語でいうなら“匠の技”といったところでしょうか──と呼ばれる彼の地で培われた伝統的な専門技術や芸術性をたっぷり盛り込んだクルマづくりをおこなっています。僕たちのようないわゆるフツーの人でもがんばれば手が届く、工芸品のような世界観に包まれたラグジュアリーカーをつくるブランド、それがDSといういい方もできるでしょう。

DSブランドは、2009年のスタート当初、シトロエンのラインナップの中のプレミアムラインとしての存在だったのですが、2015年からはシトロエンやプジョーと並ぶ“DSオートモビル”という単独ブランドとして販売されることになりました。
快適さにこだわるファミリーカーのシトロエン、スポーティさと上質さを兼ね備えたプジョー、フランスの伝統と美意識をふんだんに盛り込んだDS。ステランティスのフレンチ3ブランドの棲み分けは、大まかにいうならそんな感じでしょうか。
今回試乗した「N°4」は、そんなDSブランドのラインナップにおいて中核をなすモデルです。これまでDS「4」といった具合に車名は数字のみとされていましたが、数字の前に“N°(ナンバー)”を添える新たな車名のルールがアナウンスされ、それが導入された2番目のモデルとなります。ちなみに「N°4」はフランス語では“ヌメロ キャトル”と読まれますが、日本では“ナンバー フォー”と呼ばれています。
先代に当たる2代目DS「4」は2021年にデビュー。翌2022年の「第37回国際自動車フェスティバル」で、“世界で最も美しいクルマ”に選ばれたモデルでした。
新しい「N°4」は、いわばそのフェイスリフト版。シルエットそのものに変わりはないのですが、やはり“Cセグメント”のハッチバックにしては異例と感じられるほどの彫刻的なスタイリングデザインの美しさには強く惹かれるものがあります。

個人的には、ボディサイドにあしらわれるさまざまなキャラクターラインと、なだらかに下がっていく伸びやかなルーフラインがリアに向かってきれいに収束していく流れが好きなのですが、そのキャラクターラインの刻み方、流れる角度、1本多くても少なくても成立しなくなる見事なバランス感覚は、観るたびに感心させられます。時間をかけて綿密につくり込まなければ、きっとこうはならなかったでしょう。
しかも「N°4」になって、嫌味なくきらめきを増してるのです。
フロントのフェイシアおよび両サイドに配されたV字型のLEDランプからグリル中央部のエンブレムにかけて横一文字に、それもセンターに向けて徐々にピッチを細かくしていく凝ったステッチを入れたかのようなLEDシグネチャーライト。造形こそ先代からの踏襲ながら、スケールパターンの色合いをホワイトとライトクロームからブラックとスモーククロームに変えたことで奥行きが大きく増したリアコンビネーションランプと、それを構成する40灯のLEDによる流れるようなシーケンシャルインジケーター。それらは夜のみならず、日中でも美しい光彩を生み出します。
このように「N°4」は、造形に加えて光の演出をも巧みに取り込むことで、唯一無二の存在感を創造しているのです。
インテリアも同様で、基本的な造形を大きく変えてるわけではありません。シートやインパネなどにあしらわれた繊細なパールトップのステッチ。ダッシュボードやドア、コンソールなどに配された、ルーヴルにあるガラスのピラミッドのような細かい刻印を精緻に配列したギョーシェ彫りによるクロームのクル・ド・パリ文様。それらが生み出す陰影の美しさや優美な雰囲気には、理屈抜きに惹かれます。
また、ダッシュボードやドアトリム、シートなどにはアルカンターラがたっぷりとあしらわれていて、しっとりとした感触とやわらかな印象をもたらしています。余計なことかもしれませんが、アルカンターラは必ずしもスポーツ色を高めるためだけに存在するわけじゃなく、優美さを演出するのにも最適な素材なんだということを思い出させてくれました。
こんなふうに文字を連ねて、そこを読まれただけだと、さぞかし装飾過剰なクルマであるかのように思われるかもしれません。しかし、実車を見れば一発でお分かりいただけるはず。魅せるところは魅せるけれど、そこも含めていかに抑えるかに心血を注ぐようなところがあるので、フランスのエレガンスは成立するのです。きらびやかではあっても華美ではない。印象的ではあっても悪目立ちはしない。「N°4」は、まさにそれを地でいく存在なのです。
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