VAGUE(ヴァーグ)

時代に逆行する贅沢!! 世界から28人だけを招いて3日間も開催! 新生「BMW ALPINA」のプレビューイベントがあえて“バズらない”スタイルを選んだ理由

アルプスの麓で目にしたアルピナを貫く“速さの哲学”

 羽田を飛び立ってフランクフルト経由でザルツブルクに降り立ち、そこからクルマへ。すぐにボーダーを舞い戻ってミュンヘン南東の街・グラッサウにあるホテル「DAS ACHENTAL」に着いたのは、もはや真夜中という時間でした。

 周囲が真っ暗だったので気づきませんでしたが、翌朝、目覚めて外の景色を見やると、アルプスの山々がとても近くに見える場所でした。今回参加したのは、新生BMW ALPINAのプレビューイベント。舞台はまさに、それにふさわしい場所だったのです。

 その約1週間後、「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」で正式にお披露目された新生BMW ALPINAのコンセプトモデルとひと足早く対面し、じっくり取材できた今回のイベント。振り返ればいろいろな意味で、とてもゆとりのあるものでした。何しろ招待されたのは、世界でわずか28名のメディア/ジャーナリストだけで、しかもスケジュールは3日間に及んだのです。もちろん、それも狙いがあってのことだった……と理解し、ちょっとした感動すら覚えることになったのは、すべてをつつがなく終えた後のこと。今回は、そんな取材旅について記したいと思います。

 到着翌日のスケジュールは、16時からの「intro of BMW ALPINA」だけで、その後はカクテル、そしてディナーとしか記されていません。それまでなんの予定もなく、しかも風光明媚な場所に居て、天気も上々となれば、部屋にこもっているのはもったいない……ということで、私(島下泰久)は近くの湖までランニングに出かけることに。正直、海外に来てこういう時間を取れるのは本当に稀なことなのですが、おかげで時差ボケも解消でき、いいコンディションで取材に臨むことができました。

「Vision BMW ALPINA」
「Vision BMW ALPINA」

 16時にスタートした「intro of BMW ALPINA」は、BMW ALPINAのデザイナー陣のひとりであるアレックス・インネス氏による日本メディア向けのセッション。ここではアルピナにまつわるさまざまなキーワードが掲げられ、それを踏まえて新生BMW ALPINAがどんなデザインを取り入れていくのかが話されました。

 そもそもアルピナは、BMW車のチューナーとして産声を上げ、モータースポーツでの活躍でその名をとどろかせた後、BMW車をベースとする数々のコンプリートカーを世に送り出してきた独立した自動車メーカーでした。しかしながら2022年3月、そんなアルピナの商標権がBMWグループに譲渡されると発表されます。買収されたのは、あくまでそのブランドだけ。そして今回、新たにBMW傘下のプレミアムカーブランドとしてのBMW ALPINAが正式なスタートを切ることになりました。

 インネス氏の話も、まずはそんなルーツからスタート。アルピナが得意とした耐久レースでのヒストリー、ブランドの存在を決定づけた「B7Sクーペ」についての話から、「Understated Confidence」、「Quiet Luxury」、「Connoisseurs Choice」といったキーワードが挙げられていきます。これらをまとめれば「ひかえめで悪目立ちすることのないラグジュアリーで、玄人あるいは目利きの選ぶもの」とでもなるでしょうか。新生BMW ALPINAもその世界観を継承しながら、新たな解釈を加えていくと説明されました。

 ALPINAのマークはモノカラーとなり、書体も変更されました。フロントスポイラーに「ALPINA」の文字が入るのは従来と同じですが、新生BMW ALPINAではリアにもやはりセンターに「ALPINA」の文字が刻まれます。

 そこで気づくのは、ロゴマークが使われるのはステアリングホイール、そして4輪のホイールのセンターだけで、車体前後には「ALPINA」の文字だけが配されるということ。理由は明快で、車体の前後にはそれぞれBMWの“プロペラマーク”も同時に装着されるからです。両方に「BMW」と入っていたら、ちょっとくどいですからね。

「アルピナといえば」のボディサイドのデコラインが、オーストリアのフィッシャー(Fischer)社が手がけるスキー「C4」にインスパイアされたという話も興味をひきました。確かに両社、率直にいってソックリです。スキーもこよなく愛していたという創業者のブルカルト・ボーフェンジーペン氏の茶目っ気といったところでしょうか。

 そして、個人的に一番ササッたのが、「SPEED NOT SPORT」というキーワードでした。読んで字のごとく、高い性能を有しながらもドライバーをいたずらに鼓舞しないのが、BMW ALPINAというわけです。これ、アルピナを知る人ならば誰もがとてもしっくりくるものだと思います。

 その後は屋外でのカクテル、そして着席でのディナーへと流れ込みます。ゆっくりと沈んでいく夕陽を感じながら、この季節しか食べることのできないシュパーゲル(白アスパラ)と地元のワインをいただき、夜が更けていきます……。

●スマホは封印“本来の手法”で姿を現したコンセプトカー

 翌日は、イベント会場となるホテル「CHIEMGAUHOF Lakeside Retreat」へと移動し、夕方にはホテル1階の「Connoisseurs Club」へ。しかしながら、入口でスマートフォンにはカバーがかけられ「撮影厳禁」と告げられます。当然のように撮影するつもりで来たのに、これはどうすればいいのか……。

「Vision BMW ALPINA」のお披露目の場となったホテル「CHIEMGAUHOF Lakeside Retreat」
「Vision BMW ALPINA」のお披露目の場となったホテル「CHIEMGAUHOF Lakeside Retreat」

 ともあれ部屋に入ると、そこには新旧アルピナの内装パーツ、レザーやステッチングのサンプルなどが置かれています。壁には「C4」の実物も。しばし見入っていると、BMW ALPINAの首脳陣が姿を表しました。写真は撮れませんでしたが、録音は可能。ならばと早速、話を聞きに突撃です。

 BMW ALPINAの責任者オリバー・フィーレヒナ氏によれば、「アルピナというブランドには、ずっと深い関心を寄せていました。今後、さらに拡大していくラグジュアリーカー市場において、BMWとロールス・ロイスのギャップを埋めるブランドを求めていたのです」とのことでした。

 興味深いのは、ロールス・ロイスが端的にいって成功を世にアピールするためのクルマなのに対して、BMW ALPINAは前述のとおり、ひかえめで自らが満足、納得するための存在。同じ“ラグジュアリー”とはくくれるものの、哲学は正反対といっても過言ではないことです。要するに、松竹梅をそろえたのではなく、異なる個性のラグジュアリーをそろえたというわけですね。

 続いて、BMWグループのデザイン責任者であるエイドリアン・ファン・ホーイドンク氏は「私たちはブッフローエにある旧アルピナの本社を何度も訪れ、さまざまな資料をひも解き、歴史を再確認、再認識してきたんです」と話してくれました。「C4」についての逸話も、そこで発掘されたようです。

 思いのほかじっくり話す時間があったのは、直前の雨で進行が遅れていたから。ようやく準備が整い、全員が庭へと案内されます。アンベールの舞台は特設されたステージです。

 音楽とともにステージの端から女性ダンサーが現われ、中央のベールを被ったクルマに近づきます。皆が固唾をのんで見守る中、いよいよベールがはがされると、一瞬の静寂の後に歓声、そして拍手が巻き起こります。

 このときに思いました。「ちょっと前まで、アンベールってこういうものだったよね」と……。ステージに群がった皆がスマートフォンを掲げ、ベールがはがされた瞬間から皆が配信を始めるのが半ば当たり前になっている今、今回のアンベールは「本来あるべき姿」と感じられました。Youtubeチャンネルを運営する私がこういってしまうのは、矛盾しているかもしれませんが……。

 姿があらわになったのは「Vision BMW ALPINA」。その名のとおり、ブランドの将来目指す姿を示すこのコンセプトカーは、全長5mを超える2ドアクーペです。ボディカラーは“ミストグリーン”。フィーレヒナー氏いわく「アルピナ伝統の青と緑を融合させた」とのことでした。

 フロントには、往年の「B7Sクーペ」よろしく逆スラントしたノーズが与えられ、パネルで覆われた“キドニー”はLEDによって輪郭が強調されています。そして、知らされていたとおり、車体の前後に「ALPINA」の文字が入り、ボディサイドには例のデコラインがひかえめに描き入れられています。そう、デカールではなく、ロールス・ロイスのピンストライプのように手描きです。20スポークのホイールなども、やはり伝統のデザインですが、全体にディテールは完全に見直され、洗練されたという印象です。

 インテリアには上質なレザーを惜しげもなく使用。外観のデコラインを彷彿させるステッチには、青と緑がひかえめにあしらわれています。モノカラーとなったステアリングホイール中央のマークともども、従来のカラースキームはちょっとにぎやか過ぎると判断されたようです。

Nextキドニーの奥に潜んでいたのは紛れもないV8だった
Gallery 【画像】超カッコいい! あえて“バズらない”スタイルでお披露目された「Vision BMW ALPINA」を写真で見る(30枚以上)

page

  • 1
  • 2

VAGUEからのオススメ

海と向き合い、自らを再起動する――プロセーラーが語る、シチズン「プロマスター」で“限界を超える”意味とは【PR】

海と向き合い、自らを再起動する――プロセーラーが語る、シチズン「プロマスター」で“限界を超える”意味とは【PR】

RECOMMEND