VAGUE(ヴァーグ)

なぜEVになっても「ポルシェらしい」のか? デザイン・走り・シャシー構造から読み解く新型「カイエン エレクトリック」に息づく奥深き思想

なぜ2.5トンのヘビー級でも軽快に感じるのか?

 大容量バッテリーを搭載する新型「カイエン エレクトリック」の車重は、2550~2660kg。BEVのSUVとしては平均的な値ですが、エンジン車に比べると約400kgアップと、数字だけ見ればヘビー級です。

 ポルシェが「史上最もアスレティックな『カイエン』」と胸を張る新型「カイエン エレクトリック」ですが、そのキャッチフレーズは正しいものなのでしょうか?

 発表会の終了後、「PEC東京」の全長約2.1kmのハンドリングトラックと、ダイナミックエリアにおけるスラロームを体験することができましたが、周回を重ねるにつれ、そのキャッチフレーズの意味が理解できました。

 今回試乗したのは、「カイエン エレクトリック」のベースモデル。それでも、カタログ上の最高出力は442ps(325kW)、0-100km/h加速タイムは4.8秒を謳います。

「PEC東京」のハンドリングトラックは高速サーキットとは異なり、複雑なコーナーが連続するテクニカルなレイアウトです。最高速を試す環境でこそありませんが、低速コーナーから高速コーナーまでが巧みに配置されたレイアウトは、新型「カイエン エレクトリック」の素性を垣間見るには最適な舞台でした。

「ノーマル」モードでは、2.5トン級のSUVらしく、車体が若干、上下するのを感じます。しかし「スポーツ」、さらに「スポーツプラス」へとドライブモードを切り替えた瞬間、印象は一変。車体はフラットな姿勢を保ち、速度域を問わず、コーナーへの進入から立ち上がりまで、不安を感じるようなことはありません。

 また、ポルシェ・エレクトリック・スポーツサウンドによる自然な演出も違和感はなく、逆にこれが速度感や走行リズムをつかむ手助けとなり、ドライバーとの一体感を高めてくれます。

 さらに印象的だったのが、パイロンスラロームでの身のこなしです。それは、全長5m級、ホイールベース3m級という“デカい”SUVとは思えない軽快さで、パイロンで仕切られたタイトなコースをテンポよく駆け抜けることができました。

ポルシェ新型「カイエン エレクトリック」
ポルシェ新型「カイエン エレクトリック」

 さらに、あえて少々無理を強いるようなステアリング操作を与えても、車両は正確に追従し、前後の姿勢が乱れる気配はありません。高いボディ剛性と適切な重量バランスに支えられた一体感、そして、ドライバーの意思に忠実に応えるハンドリングは、まさにポルシェそのもの。ドライバーにヘビー級であることをすっかり忘れさせ、思いどおりに走ることの気持ちよさを実感させてくれる1台でした。

 実際に触れてみると、新型「カイエン エレクトリック」は2.5トン超えの重量を克服するだけでなく、設計思想とデザイン、空力、電子制御といったすべてを磨き上げることで、重量そのものを意識させない走りを実現していることが分かります。これこそが新型「カイエン エレクトリック」というモデルの真骨頂なのでしょう。

* * *

 新型「カイエン エレクトリック」は、スポーツカーらしさを電動化によってまだまだ進化させることができると証明してみせたモデルといえるでしょう。

 電動化はゴールではなく、その先にある新しいSUVスポーツカーの可能性を見い出すためのステップ……初代モデル誕生から今日までの歩みを俯瞰し、実際に新型「カイエン エレクトリック」の実力に触れた今となっては、そうした未来もさもありなんと思えてきます。

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村田尚之
村田尚之
フリーランスライター・フォトグラファー
東京都出身。学生時代から雑誌の編集に携わる。自動車専門誌やメーカー広報誌などを手がける編集プロダクションを経て、2002年にフリーランスライター・フォトグラファーとして独立。クルマや旅客機、鉄道など乗り物関連の専門誌やニュースサイトを中心に執筆・撮影。『羽田空港アーカイブ1931-2023』(徳間書店)、『ANAの本。』(誠文堂新 光社)など書籍の制作にも携わる

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