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711馬力のポルシェ新型「911ターボS」はなぜ85kg重くなっても“ニュル”では約14秒速くなった? サーキットで見えた“速さと扱いやすさ”の正体

なぜ711psもあるのに扱いやすく感じるのか?

 711psという数字を見れば、新型「ターボS」は誰もが操れるクルマには思えないかもしれません。また、そのパワーを存分に解放できるのは公道ではなく、サーキットに限られるのも事実でしょう。

 今回、北海道の十勝スピードウェイでそのポテンシャルを実感することができましたが、歴代「911ターボ」の中でも扱いやすいモデルだなと感じたのは事実です。もちろん、加速も減速も強烈のひと言ですから、自分が冷静さを保っている限りは、という条件つきですが……。

 扱いやすいと感じる理由はいくつかあります。まず800Nmという最大トルクが2300~6000rpmという広い範囲で発生することでしょう。これは、特定の回転域で突然、猛烈な力が出るのではなく、アクセル操作に対して連続的かつ力強く加速していく特性につながります。さらに、2基の“eターボ”による優れたレスポンスも、ドライバーがクルマの動きを予測しやすい理由のひとつです。

 そして、711psを扱いやすいと感じさせるもうひとつのカギが、シャシーを支える電子制御。新型「ターボS」では、ehPDCC(電気油圧式ポルシェ・ダイナミック・シャシー・コントロール)、PTM(ポルシェトラクションマネジメント)、PASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメント)、リアアクスルステアリングなどのシステムが、走行状況に応じて車体の姿勢や駆動力、サスペンションの状態などを適切に制御。4輪が路面をしっかりととらえてくれます。

 それにより、例えばコーナーでは、ehPDCCが車体のロールを抑え、安定した姿勢をキープ。一方、PTMは前後の駆動力を状況に応じて制御し、711psと800Nmの大きな力を4輪へ適切に伝えます。そしてPASMは、路面や走行状況に合わせてダンパーを制御。リアアクスルステアリングは車両の旋回性や高速走行時の安定性を高めます。

ポルシェ新型「911ターボS」
ポルシェ新型「911ターボS」

 ここで重要なのは、これらの電子制御がドライバーの操作を抑え込むためのものではないということ。むしろ、ドライバーがアクセルやステアリングで入力した意思を、クルマができるだけ正確に路面へ伝えるための“裏方”として機能しています。この裏方の働きが実にキメ細やかで、その動作はまるでドライバーの意図を先読みしているのかと思えるほどです。

 例えば、走行モードが「Sport Plus」であれば、減速・コーナリング・加速という一連の流れにおいて、ブレーキングやアクセル操作に合わせて瞬時に適切なギアへとシフトダウン/アップがおこなわれます。その動作の自然さやスムーズさは、まるで自分のドライビングテクニックが突如として上手くなったと錯覚するほどでした。

●“軽さこそ正義”だけじゃない! 新型「911ターボS」が示した新たな答え

 量産型「911」で史上最強のパワーを誇る新型「ターボS」ですが、ポルシェは日常の街乗りや高速道路でのロングドライブ、そしてサーキット走行も1台でこなすオールラウンダーを標榜するモデルと位置づけています。

 一方、「911」のラインナップには、よりストイックにドライビングを楽しめる、サーキットで腕を磨きたいというオーナー向けの「GT3」系モデルも用意されています。

 ニュルブルクリンクにおいて、そんな「GT3」系モデルに迫るタイムをたたき出しつつも、アマチュアドライバーを受け入れ、その気にさせる新型「ターボS」の懐の深さは、さすがのひと言に尽きます。

ポルシェ新型「911ターボS」
ポルシェ新型「911ターボS」

 そして今回、十勝スピードウェイでドライブして強く感じたのは、新型「ターボS」はスポーツカーの常識である“軽さこそ正義”という考え方への新たな回答である、ということです。

 重量増に勝る車両全体の進化、強烈なパワーを制する電子制御の洗練、これらがもたらす扱いやすさ……相反する要求を1台の「911」で成立させたポルシェのエンジニアリングはまさにあっぱれであり、新型「ターボS」における最大の価値といえるでしょう。

 とはいえ、どれだけテクノロジーが進歩しようとも物理の法則には逆らえませんから、幸運にも新型「ターボS」のオーナーになられた方は、冷静さだけはお忘れなく。

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村田尚之
村田尚之
フリーランスライター・フォトグラファー
東京都出身。学生時代から雑誌の編集に携わる。自動車専門誌やメーカー広報誌などを手がける編集プロダクションを経て、2002年にフリーランスライター・フォトグラファーとして独立。クルマや旅客機、鉄道など乗り物関連の専門誌やニュースサイトを中心に執筆・撮影。『羽田空港アーカイブ1931-2023』(徳間書店)、『ANAの本。』(誠文堂新 光社)など書籍の制作にも携わる

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