“ロータリーエンジンの救世主”は日本の老舗部品メーカーだった!? マツダ「RX-7」のキーパーツ復活計画はどのようにして始まったのか!?【Behind the Product#43】
“最後の技術者”から若手へ受け継がれる匠のワザ
ミクニの若手社員による未来構想の活動は2023年にスタート。さまざまな議論を重ね、渡辺さんら3人が補修用部品を具体的な事業テーマとして検討し始めたのは2025年の初頭だったといいます。
そして、補修用部品に力を入れるとの方針を固めたちょうどその頃、マツダから“メタポン”製造の打診が舞い込んできたといいます。「何か引き寄せられるものを感じました」と渡辺さんは話します。
いくつもの偶然が重なってスタートした“メタポン”復活プロジェクトですが、「もしもこのタイミングでなければ、プロジェクトの始動は難しかったかもしれません」と渡辺さんはいいます。
「実は、当時の開発メンバーの多くが世代交代の時期を迎え、最後のひとりも退職をひかえていました。そのため知見の継承を進め、トラブルが起きたときの“勘所”を聞き取るなどして、情報をまとめていたのです。タイミングがもう少し遅ければ間に合わなかった可能性が高いですね」
また“メタポン”の製造には、精密なセットアップが必要です。エンジンの回転数に応じて緻密にオイルの吐出量をコントロールするためには、センサーやモーターの位置を精密に調整しながら組み立てる必要があります。現在、ミクニで電子制御式“メタポン”の精密な組み立てを担っているのは、熟練した女性スタッフだといいます。
「彼女がいなければ、電子制御“メタポン”の復活はなかったかもしれません。ミクニは以前より、高い技術力を持つ人のワザを継承しようという“匠プロジェクト”を展開しているのですが、それにふさわしい、まさに匠のワザですね」(田中さん)

今回の“メタポン”復活プロジェクトは、ミクニ社内に蓄積された匠のワザを次の世代へ継承する契機にもなっているようです。
●オーナーからの感謝が部品復刻を進める原動力に
こうして復刻へ向けた検討を進めていたものの、「榛名ロータリーミーティング」に参加するまでは、「本当に買ってくれる人がいるのか?」と半信半疑だったという渡辺さん。しかし、実際に会場へ足を運んでみると、多くのロータリー車オーナーから「どんな価格でも買います。がんばってください」と声をかけられたといいます。
「今も乗り続けている人たちにとって、『RX-7』は人生そのものといってもいいクルマなんだろうなと感じました。ミクニに勤めてきて、あんなに感謝されたのは初めてのこと。これまでにない感動を覚えましたね」(渡辺さん)
基本的に、完成車メーカーなど企業向けの部品供給をビジネスの主軸としているミクニ。直接、ユーザーから感謝の声を聞けたことは、プロジェクトに携わる3人にとっても大きな励みとなったようです。
さらに、先の発表以降、本取り組みに対して業界内から関心が寄せられているといいます。“メタポン”という小さな部品の復活プロジェクトが、日本のクルマ文化を未来へつなぐ新たな一歩になるかもしれません。
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