VAGUE(ヴァーグ)

同じトヨタ「クラウン」なのに走りはモデルごとに違う!? 4つの車種が示す“新たな生き様”とまだ見ぬ“5番目”の可能性とは?

2026年の改良でさらなる進化! 4モデルが生み出す「スパイラルアップ」とは?

 16代目「クラウン」が世に示したブランド論とは、「形式を壊すことでしか、精神を守ることはできない」という覚悟にほかなりません。

 守るべき伝統とは、過去に成功した形やスペックを博物館のように温存することではなく、変化を恐れず、その時代に真に必要な価値を創り出す闘いそのものです。

 16代目の発表直後、世間からは「こんなの『クラウン』じゃない」という猛烈な反発と批判が巻き起こりました。

 しかし章男氏は、それを平然と受け止めました。

「ここまで話題になるのは『クラウン』だから。賛否があるのはよいことで、本当に恐れるべきは相手にもされない無関心であることだ」

 4つの車型という多様な生き様を提示したことで、人々は再び「自分ならどれと人生を共にするか」と熱っぽく語り始め、「クラウン」はついに人々の心の中に自分事として還ってきたのです。

 過去の最高級という肩書にぶら下がるのをやめ、マルチパスウェイによる現実的なカーボンニュートラルへの貢献や、多様な人生に寄り添うという「役割」に命を懸けたからこそ、その存在意義は再び揺るぎないものとなりました。

 そして2026年9月、「クラウン」シリーズはさらなる深化の局面を迎えました。

 4台を一挙にそろえるのではなく、時間差を置いて順次、世に送り出した背景には、開発陣のマンパワーの問題もあったでしょう。

 しかし、その時間差は、開発現場で回し続けられた「スパイラルアップ」という執念の好循環を生み出しました。

 これは「クロスオーバー」、「スポーツ」、「セダン」と“実戦”を重ねる中で得られた知見と反省を、最後発の「エステート」へ余すところなく注ぎ込み、そこで磨かれた最新の動的質感と制御技術を、今度は初期モデルへと還流させていく進化の連鎖です。

「クラウン・エステート」
「クラウン・エステート」

「最新の『クラウン』こそが最良の『クラウン』」であるために、2026年9月の改良では、「クロスオーバー」と「スポーツ」の2.5リッターHEV(ハイブリッド)モデルに、待望の“第5世代ハイブリッドシステム”が導入されました。

 出力向上を果たしたモーターと、バイポーラ型ニッケル水素バッテリーの制御が緻密にかみ合うことで、発進から中間加速に至る領域で、よりなめらかで力強い走りを実現する進化が図られています。

 なお、「セダン」にも同年9月に一部改良が施され、「エステート」の一部改良は2026年末に予定されています。

 筆者(山本シンヤ)はこれら最新モデルにはまだ試乗できていませんが、初期型で指摘されていたエンジン始動時の濁音や、アクセル開度に対する回転の先行感が薄れ、ペダルを踏み込んだ瞬間から静かで濃密なトルクが淀みなくわき上がる、本来あるべき高級車としての呼吸を取り戻してくれていることを期待しています。

 完成に甘んじることなく、常に自らを疑い、過去の自分を壊し、学びながら前へと進み続ける……かつて徳川の幕府が15代でその役目を終えたのに対し、「クラウン」は15代目の袋小路から自ら聖域を打ち破り、16代目にして新しい文明開化の産声を上げたのです。

●ポジショニングマップに残る“空白” まだ見ぬ「クラウン」の姿とは?

 ただし、ここでひとつ、未来への興味深い問いが残ります。

 縦軸に「創造/基盤」、横軸に「感性/理性」をとった16代目のポジショニングマップを冷静に眺めた際、唯一「空欄」のまま残されている領域があります。それが左下の「感性×基盤」です。

 この言葉から想像するに、奇をてらわない正統な血統でありながら、ドライバーの感性にストレートに訴えかける派生モデルの存在です。一体そこには、どのようなモデルが入り得るのでしょうか?

 新興のブランドにはマネのできない、幾多の成功と挫折を乗り越えてきたロングセラーモデルだからこそ、その生き様には無数の引き出しとストーリーが存在します。

「クラウン・スポーツ」
「クラウン・スポーツ」

 かつて11代目が誇った「ロイヤル/アスリート」の走りを正統に受け継ぎ、セダンベースで低く構えた“快速ステーションワゴン”の生まれ変わりなのか。あるいは、3代目や4代目のハードトップの血脈を呼び覚まし、かつての「ソアラ」を想起させるような、息を呑むほど流麗な“2ドアクーペ”なのか。

 もちろん、これらはあくまで筆者の想像に過ぎません。しかし、もしそんな選択肢がラインアップに加わった時、「クラウン」の物語はさらに深みを増し、より魅力的なものになるのではないでしょうか。

 時代の荒波に媚びるのではなく、自らの足で立ち、誰かのために変わり続けること。これこそが、長い冬を乗り越えて世界へと解き放たれた16代目「クラウン」の、誇り高き生き様そのものなのです。

Gallery 【画像】セダンからスポーティなSUV、伸びやかなエステートまで! 16代目トヨタ「クラウン」4モデルを写真で見る(27枚)

page

  • 1
  • 2

VAGUEからのオススメ

クルマ好きの男が「本気で欲しい」と思ったミニバン! マイチェンした「新型セレナ」の圧倒的完成度【PR】

クルマ好きの男が「本気で欲しい」と思ったミニバン! マイチェンした「新型セレナ」の圧倒的完成度【PR】

RECOMMEND