パフォーマンスは超ド級! メルセデスAMG「GTクーペ」の最高峰“サーキットでの印象”は? 電動化で驚異の速さを獲得! ただし乗りやすさも抜群です
メルセデスAMGが戦うF1由来の技術をフィードバック
メルセデス・ベンツのサブブランドのひとつであり、パフォーマンスを重視したスポーツ志向の強いのがメルセデスAMG。その最高峰モデルともいうべきメルセデスAMG「GT63 S Eパフォーマンスクーペ」を富士スピードウェイのレーシングコースで試乗することができました。

AMGは、1967年にレーシングエンジンの設計・テストをおこなうメーカーとして誕生。その後、メルセデス・ベンツ車を独自にチューニングするメーカーとなりますが、1999年にはダイムラーの傘下に。そして、2014年に正式に統合され、ブランド名称をAMGからメルセデスAMGに変更し、現在に至ります。
現在、メルセデスAMGは多くのラインナップを展開していますが、すべてのモデルに共通するコンセプトは「限界を追求」と「妥協をしない」。その上で筆者(山本シンヤ)は、いい意味で「過去を振り返らず、常に先を見ている」という姿勢がメルセデスAMGにはあると見ています。
そのひとつがパワートレイン戦略です。
「63」シリーズを振り返ると、かつては自然吸気式の6.2リッターV型8気筒エンジンを搭載。しかし、時代背景を踏まえてサラッとその名機を諦め、同じV型8気筒ながらダウンサイジングコンセプトを導入した4リッターのツインターボエンジンを導入します。さらにその後、電動化を採用。現在は、2リッターの直列4気筒電動ターボ+高出力モーターの組み合わせを用意しています。
そんなメルセデスAMGが展開する電動化パワートレインの最高峰が、4リッターのV型8気筒ツインターボエンジンに、高出力モーターを組み合わせたPHEV(プラグインハイブリッド)です。
PHEVというと、バッテリーとモーターだけで走れる距離=EV航続距離が注目されがちですが、メルセデスAMGのそれは「パフォーマンスのために活用したもの」と、目的が明確です。その結果、システム出力は816ps、最大トルクは1420Nmと、もはや超スーパーといってもいいスペックを誇ります。
このシステムは、フロントに612ps/850Nmの4リッターV型8気筒ツインターボエンジン(M177型)と9速ATを、リアに204ps/320Nmのモーター(2段ギアボックスつき)を搭載。自社開発の“AMGパフォーマンスバッテリー”の容量は6.1kWhで、高出力を繰り返し発生できる構造と冷却性能(560個のセルと個別に直接冷却)、さらに軽量構造(89kg)といったF1マシン由来の技術を直接的にフィードバックしています。ちなみにEV航続距離は12kmと、あくまでオマケです。
そんな超スーパーなパワートレインを搭載するメルセデスAMG「GT63 S Eパフォーマンスクーペ」を富士スピードウェイのレーシングコースでドライブできることになったのですが、コースイン直前、一抹の不安がよぎりました。
筆者はこれまで数えきれないほどサーキット試乗をこなしていますが、「GT63 S Eパフォーマンスクーペ」は816ps/1420Nmと超ド級のスペックを誇る上、車両重量は2150kgと重量級です。「パワートレインのハイパフォーマンスを本当に使いこなせるの?」、「直線番長じゃないの?」と不安を覚えてしまいました。
とはいえ、ドライビングプログラム「AMGエクスペリエスonトラック」のチーフインストラクターを務め、同業の先輩でもある中谷明彦氏が、「全く問題ないよ。おすすめは、ドライブモードは『RACE』でESPの設定は『SPORT』だよ」とアドバイスしてくれました。その言葉を信じてコースイン。まずインラップは“様子見”のペースで走行します。
アクセルペダルを踏み込むと、レスポンスのよさとモリモリわき上がるトルクとが相まって、まるで“ワープ”したかのように猛烈な速さを示します。ですが、ハイパワーBEV(電気自動車)のような脳天を揺さぶるような感じや、暴れ馬のような炸裂感とは異なり、むしろ手の内にあるような速さ感です。
この辺りは、エンジン/モーターの巧みな連携や味つけの妙はもちろんのこと、ハイパフォーマンスをしっかりと路面へ伝えることができるフットワークを「GT63 S Eパフォーマンスクーペ」が備えているからでしょう。
塊のように剛性は高いのに、どこかしなやかさを感じさせる車体。その上で、位置決めがバシッと決まったタイヤ(フロントはXL規格、リアはHL規格のミシュラン「パイロットスポーツS5」)に加えて、電子制御連続可変式のスタビライザー&ダンパーを備えた“AMGアクティブライドコントロールサスペンション”や4輪操舵の“リアアクティブステアリング”、さらには、各種空力アイテムなどの合わせワザにより、2トンを超えるモンスターとは思えないほど扱いやすいハンドリングです。しかも、電子制御などで無理やり曲げている感じはなく、とにかく自然で素直なことに驚きます。
もう少し具体的にいうと、心地いいダルさを伴いながらも正確かつ精緻なステアフィール、フロントにV8エンジンを搭載していることを忘れるくらい軽快な回頭性。その上で、旋回中は内燃機関モデルである「GT63 4マチッククーペ」より旋回軸がドライバーの近くにある感覚が強く(前後重量配分は55:45→49:51)、ステアリングだけでなくクルマ全体で曲がる感覚がより強いのです。
それにより、路面に張りつくような安定感を持ちながら、アクセルでクルマの向きをコントロールできる自在性の高さを感じられ、しかもコーナーからの脱出時は、パワートレインのパフォーマンスを余すところなく路面に伝える怒涛のトラクションを実感できます。
これらの美点が、重量級のモンスターでありながら、まるでミドルクラスのスポーツカー(400ps前後、かつ車重は1.5~1.6トン)のような手の内感のある走りを実現しているのです。
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