魅力はスライドドアだけじゃない! なぜBYDは“日本専用”の軽EVをイチから開発した? 新型車「ラッコ」は日本の軽自動車並みに使えるのか
なぜ海外メーカーが先行? 日本専用車「ラッコ」の使い勝手を検証
BYDが発表した軽自動車規格のBEV(電気自動車)「ラッコ」のスゴさは、日本市場に向けてさまざまな部分を徹底的にアジャストしてきたことだと筆者(工藤貴宏)は考えます。何せ、日本市場専用設計モデルですからね。
ボディは、背の高いスーパーハイトワゴン型で、軽乗用車で人気の高いスライドドアを装備。しかも、この軽乗用スーパーハイトワゴン×BEVという組み合わせを、日本メーカーに先駆けて商品化したのが海外メーカーのBYDだったという点も見逃せません。
では「ラッコ」は、日本の軽自動車が長年磨いてきた使い勝手をどこまで研究し、それをどこまで再現できているのでしょうか。
これまで日本で販売されてきた輸入車を振り返ってみると、日本市場だけを見据えてイチから開発されたモデルは皆無といえます。全幅を1850mmに抑えたり、フェンダーの張り出しを抑えて軽自動車規格に収めたり、日本仕様のためにDCT(デュアルクラッチ式トランスミッション)を開発したりと、日本向けに手を加えた例はありましたが、それらはいずれも本国で販売するモデルをベースに日本仕様を仕立てたものでした。
しかし「ラッコ」は違います。日本市場だけをターゲットに、完全に日本のマーケットに合わせてイチから開発されたモデル。中国のBYDが、そこまで日本に特化したクルマをつくってきたのですから驚くしかありません。
「ニーズは国によって異なる。日本で買ってもらうならば、日本人が求めるクルマでないといけない」という考え方から開発されたモデルであり、アメリカ向けに開発されたモデルを持ってきて「日本でももっと売れ。売れないのは日本市場が閉鎖的だからだ」という考え方とは真逆といっていいでしょう。

そんな日本専用モデルであることを象徴するのが、スライドドアを備える軽スーパーハイトワゴンのBEVというパッケージングです。
今、日本の軽乗用車市場は、6割以上がスライドドア装着モデルであり、BEVでもスライドドアを求めるニーズは強いはず。ですが、これまで日本メーカーは、スライドドアつきの乗用BEVをラインナップしてきませんでした。三菱「i-MiEV」に始まり、日産「サクラ」もホンダ「N-ONE e:」も同様。ホンダ「N-VAN e:」はスライドドアを備えた背の高い軽BEVですが、商用車だけにリアシートが狭いのです。
軽乗用のスーパーハイトワゴン+BEVの組み合わせは、本来なら日本メーカーが真っ先に手がけるべきだったモデルのはず。しかし残念ながら、それを最初に手がけたのは輸入車の「ラッコ」だったのです。理由はいろいろあるにせよ、日本メーカーがやらなかったことを海外メーカーが先行したという事実の意味は、大きいのではないでしょうか。
では、日本専用をうたう「ラッコ」の使い勝手はどうでしょうか? 結論からいえば、「N-BOX」を始めとするライバルたちに、実用性では全くヒケを取りません。
例えば、キャビンの広さ。筆者の比較では、リアシートの広さ(“室内長”ではなく前席の背もたれ~後席の間隔)は、「N-BOX」など日本の軽スーパーハイトワゴンの上位モデルには届かないものの、ほぼ同等。ゆったりと座れる十分以上の広さが確保されています。
この辺り、実はパッケージングの考え方がライバルとは少し違うようです。「ラッコ」は前後席間の距離が少し短い分、後席を最も後ろへスライドした状態でもラゲッジスペースの奥行きをライバルより広く確保しています。

そして後席のシートアレンジは、左右独立したリクライニング、スライド、そして格納と、日本のライバルと同等の多彩さ。輸入車だから、というネガはありません。むしろ、日本の軽スーパーハイトワゴンでは一部のモデルにしか組み込まれていない後席センターアームレストや、座面跳ね上げのアレンジまで組み込んできたことに驚きです。
さらに、ダッシュボードに3つのドリンクホルダー(最上級グレード「300プレミアム」だと、そのうちひとつは保温機能つき)があったり、助手席前のトレーにボックスティッシュを置けたりと、収納スペースの豊富さは日本車と比べてもトップレベルで、執念を感じるほどです。こういう部分でも「日本車をよく研究したんだろうな」ということが伝わってきます。
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