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なぜ「センチュリー」は“1台の最高級車”からトヨタのハイエンドブランドへと進化するのか? 「One of One」が示す次の100年とは

“SUVではない”新しい「センチュリー」が目指したもの

「センチュリー」はトヨタ社内で長く“聖域”とされてきた存在です。初代の生産立ち上げ時、豊田章一郎氏が関東自動車の現場に泊まり込んで開発に関わったほどのモデルで、トヨタ自動車会長の豊田章男氏自身も長く“名誉会長のクルマ”という意識を持っていたといいます。

 そんな「センチュリー」を変えるにあたり、開発陣が追求したのはSUVをつくることではなく、あくまで新しい時代のショーファーカーをつくることでした。社内の商品化決定会議でも“SUV”という言葉は出ず、役員陣からは「まさに『センチュリー』ができた」と評されたといいます。

 その考え方は車体構造にも表れています。キャビンとラゲッジスペースを厚いパーティションで完全に分離し、その背後に巨大なVブレースなどの補強骨格を配置。最新のセダンをもしのぐほどの高いねじり剛性と遮音性能を追求しました。開発陣はその構造を“5ドアのセダン”と位置づけています。

 また、後輪操舵を活用した「リアコンフォート」モードでは、後輪を前輪と同位相に動かすことで、車体をいわば“カニのように”横へなめらかに移動させ、後席で仮眠するVIPの頭が揺さぶられて目を覚ますことまで防ごうとしています。

 さらに、運転手であるショーファーも、このクルマのもうひとりの主役です。操作する手元を後席から見せないインパネやコンソールのデザインには、後席に座るVIPへの気遣いとともに、プロの道具としての機能美も盛り込まれています。

 つまり、新しい「センチュリー」で変わったのはボディ形状だけではありません。乗る人と運転する人、その双方からショーファーカーそのものを再定義したのです。

 そんなトヨタの挑戦は、クルマの設計だけにとどまりませんでした。

●大量生産が得意なトヨタがオーダーメイドへ踏み込んだ理由

 大量生産によって高品質なクルマを安定して供給することを得意としてきたトヨタにとって、顧客一人ひとりの要望に応じて仕様を変えるオーダーメイドは、大きな挑戦でした。新しい「センチュリー」では、そのものづくりの考え方そのものにも変化が表れています。

トヨタ「センチュリークーペ」(コンセプト)
トヨタ「センチュリークーペ」(コンセプト)

 象徴的なのが、フルオーダーの提案例として示された“リンク式パワードア”です。これは、豊田章男氏が普段使用する「センチュリーGRMN(現在のMORIZO RR)」にも採用された仕組みを発展させたもの。一般的なスライドドアのようにボディ側面へ目立つレールを設けるのではなく、上下2本のリンクアームによってドアをいったん外側へ押し出し、そのままスライドさせる構造を採用しています。

 開発陣が目指したのは、日本の障子をすっとなめらかに開け閉めするような所作でした。大きく重いドアを単に電動で開閉するのではなく、乗員が乗り降りする場面まで美しく見えるよう、その動きの速さやなめらかさを細かくつくり込んだといいます。

 さらに、顧客の体格に応じたカスタマイズにも対応します。販売店の“センチュリーマイスター”が顧客と対話し、標準的な推奨仕様をベースにしながら、「体格に合わせてセンターコンソールを変更したい」「より足を伸ばせるように座面位置やスライド量を調整したい」といった要望にも、技術陣が向き合う体制を整えました。

 現在の価格(消費税込)は2700万円ですが、すべての「センチュリー」がその価格で完成するという意味ではありません。これはいわばオーダーの出発点となる仕様の価格であり、顧客が求めるカスタマイズの内容によって、最終的な価格や納期は個別に決まります。従来の量産車とは異なる“応談”のクルマづくりへ踏み込んだともいえるでしょう。

 完成した商品を選んでもらうのではなく、顧客と対話しながら、その人のための1台をつくる……「センチュリー」では、クルマそのものだけでなく、クルマの“つくり方”まで変えようとしているのです。

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Gallery 【画像】セダン、SUV、そしてクーペまで! 1台の高級車からブランドへ進化する「センチュリー」を写真で見る(30枚以上)
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