“80点主義”は「退屈な優等生」の意味ではない!? トヨタ「カローラ」60年の歴史に隠された数々の挑戦とは?
「レビン」に“AE86”、「カローラ クロス」! 時代に合わせて生まれた派生モデル
一般的にベストセラーカーは保守的といわれがちですが、「カローラ」に関しては、筆者は「半分正解で、半分間違い」だと考えています。
なぜなら、信頼性と実用性という軸を守りながら、時代の空気やトレンドに対して柔軟に姿を変えてきた歴史があるからです。
その柔軟性が最も顕著に表れていたのが、歴代の多彩な派生モデルたちでした。
2ドア/3ドアクーペとして若者の血をたぎらせた「カローラ レビン」、サッシュレス4ドアでつややかなスタイリングを提案した「カローラ セレス」。
欧州ホットハッチの薫りを持ち込んだ「カローラ FX」や「カローラ ランクス」、日本のミニバン・トールワゴン需要に応えた「カローラ スパシオ」や「カローラ ルミオン」、そして、扱いやすい弟分としてエントリー層を支えた「カローラII」などなど。
これほど多彩な挑戦が可能だったのは、屋台骨となる王道のセダンとワゴンが揺るぎない信頼を築いていたからにほかなりません。
そして現行12代目において、時代の要請に応えたモデルが「カローラ クロス」です。
かつて1982年に登場した「スプリンター カリブ」は、日本のクロスオーバーSUVの源流ともいえる先駆者でした。初代は「ターセル/コルサ/カローラII」系の車台をベースに誕生したモデルですが、そのアウトドア志向は「カローラ クロス」にも通じるものがあります。
スペシャリティ色の強い「C-HR」に対し、ファミリーがゆったり過ごせる実用性と広いラゲッジスペース、手の届きやすい価格設定など、大衆車としての本分を注ぎ込んだ、ある意味で王道のクロスオーバーです。
歴代「カローラ」でも最大級となる全幅1825mmのボディサイズを持ちながら、日本のユーザーが日常で気負いなく扱えるように仕立てられています。
登場するやいなや、本家のセダンやツーリングをしのぐ人気を獲得しました。

時代がSUVを求めるなら、そのど真ん中に最も「カローラ」らしい良品廉価な答えを提示する……そんな柔軟さも「カローラ」の持ち味なのです。
●5ナンバーから3ナンバーへ! 日本の「カローラ」が変わった理由
「次の50年に向けて、『カローラ』はどうあるべきか?」……2016年に生誕50周年を迎えた際、開発陣が導き出した答えは“原点に戻る”ことでした。
12代目のチーフエンジニアを務めた上田泰史氏は、長谷川龍雄氏が目指した「ゆとりがある」、「引け目を感じない」、「いつまでも乗り続けたい」というユーザーの期待を超える価値、すなわち“現代のプラスα”を提供するためには、再びグローバル1スペックに戻ることが不可欠だと決断しました。
その結果、2019年に登場した日本向けの「カローラ」セダンと「カローラ ツーリング」は、従来の5ナンバーサイズから3ナンバーサイズへと移行しました。
発表当初、ネット上では「日本市場は見捨てられた」、「カローラよ、お前も肥大化か」といった批判的な声も飛び交いました。
しかし実車を見れば、単なる海外仕様の流用ではなく、日本の道路環境に合わせて仕立てられた“日本専用の3ナンバー”であることが分かります。
上田氏は「お客さまの自宅の車庫にクルマを持ち込み、ドアの開きやすさまで検証した」と語っていました。
日本の狭い駐車場や道路環境への配慮は、「カローラ」にとって欠かせません。
海外仕様の全幅が1780〜1790mmであるのに対し、国内仕様は日本の環境になじんでいた3代目「プリウス」(30系)を指標として1745mmへと絞り込まれました。
さらにホイールベースも、海外向けの2700mmから2640mmへと短縮。ドアの断面形状まで国内専用につくり直すことで、ショートワゴンやコンパクトセダンらしい凝縮感と、取り回しのよさを両立させたのです。
グローバルで共通の骨格を使いながら、仕向地ごとの最適化も実現する。それを可能にしたのが、トヨタのクルマづくりの構造改革“TNGA”でした。
共用する固定部位と、柔軟に変えられる変動部位をあらかじめ定義しておくことで、ひとつのプラットフォームで世界中のニーズに対応できるようになったのです。
12代目の開発で追求されたのは、サイズや構造の合理化だけではありません。かつて筆者が厳しく評価していた“走り”も、大きく変わりました。
その時、開発現場では何が起きていたのか? 後編では、筆者自身の試乗体験と、次期13代目の開発責任者への直接取材から迫ります。
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