なぜレクサスは新型「ES」でセダンを“大胆に再定義”した? 電動化時代に導き出された“新しい高級セダン”の答えとは
なぜHEVとBEVをひとつの「ES」に落とし込んだのか?
もうひとつ、新型の性格を大きく変えたのがパワートレインです。
日本仕様の新型「ES」には、2.5リッターの直列4気筒エンジンとハイブリッドシステムを組み合わせた「ES350h」に加えて、BEVの前輪駆動「ES350e」と、前後に“eAxle”を備える電動4WD「ES500e」が設定されています。
システム最高出力は、「ES350h」が248ps、「ES350e」が224ps、「ES500e」が342psで、BEVのWLTCモードでの一充電走行距離は「ES350e」が670km、「ES500e」が636km(いずれも19インチタイヤ装着車)となっています。
注目したいのは、レクサスがBEV版を「ES」とは別のモデルとして切り離さなかったことです。新型のために刷新された“GA-K”プラットフォームはHEVとBEVの双方に対応。レクサスはマルチパスウェイの考え方に基づき多様な電動車を提供すると説明しており、新型「ES」を次世代電動車ラインナップの先陣と位置づけています。
もちろん、なぜBEV専用車にしなかったのかについて、レクサスが理由を明示しているわけではありません。しかし、その商品構成から見えてくるのは、動力源よりも「『ES』として何を体験してもらうか」をレクサスがより重要視したことです。
HEVでもBEVでも、静かで快適に移動でき、ドライバーの操作には素直に応える。その共通価値を守りながら、それぞれの電動パワートレインならではの個性を与える……新型「ES」にとって電動化とは、車種を分ける理由ではなく、「ES」らしい価値を異なる方法で実現する手段なのでしょう。
●なぜレクサスは“セダン”を選んだのか?
ここまで大胆に変えるのであれば、そもそもセダンである必要があったのか? という疑問も浮かんできます。その答えを、チーフエンジニアの千足浩平氏は次のように説明しています。

千足氏が着目したのは、セダンというのは、エンジン/モータールーム、居住空間、トランクという3つの独立した空間から成り立つこと。その構造には、高いボディ剛性と低重心を実現しやすいという工学的な合理性があり、それが乗り心地や操縦安定性、静粛性につながるとしています。
つまり、新型「ES」の全高が従来モデルより100mm以上高くなったのは、居住性をSUVへ近づけたかったわけではありません。後席を充実させたからといっても、運転する楽しさを捨てたわけではありません。そして、BEVを加えたからといっても、従来のセダンの価値を否定したわけではありません。
むしろレクサスは、電動化によって生まれる新しいパッケージングや、より広い室内へのニーズを受け入れながら、セダンがもともと持っていた構造上のメリットを改めて活用しようとしたのだろうと考えられます。そのために、プロポーションを変え、後席を広げ、HEVとBEVに対応する新しいプラットフォームをつくり、剛性や足まわりを見直したのです。
千足氏は、新型ESを「次世代レクサスの幕開けを象徴するクルマ」と位置づけています。
従来の低さや古典的な3ボックス形状をそのまま守ることだけが、セダンを残す方法ではありません。その中で新型「ES」が示したのは、電動化や広い居住空間という時代の要求を取り込みながら、セダンだからこそ得られる静粛性、乗り心地、操縦安定性、そして美しいプロポーションを新しい形で組み直す、という答え方です。
つまり新型「ES」は、単に電動化されたセダンではないのです。電動化時代に、セダンである意味そのものを考え直したモデルといえるでしょう。
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