「スマホ禁止、行き先も秘密」 ポルシェ×東大先端研が高校生10人と挑んだ“正解のない旅” 5日間の行程で気づいた「本当の学び」とは?【Behind the Product#50】
船が支える離島の暮らし! 的山大島で気づいた“当たり前”の違い
「旅」は対馬から平戸を経て、さらにフェリーで的山大島へと続きます。
ここで参加者に与えられたテーマのひとつが「この離島のライフラインは?」という問いでした。
的山大島ではグループに分かれ、島を自分たちで調査します。中学校や診療所、デイサービス施設など、島の人々の暮らしを支える場所へと足を運びました。また翌朝には、早朝から漁港へ出向き、水揚げされたばかりのイカを買い、それを自分たちでさばく体験も待っていました。
ちなみに、この漁港体験の前夜、中邑さんから「参加は自由。寝坊した者は容赦なく置いてゆく」とのお達しがありました。なかには寝坊して集合時間に間に合わない参加者もいましたが、そこは自己責任。この辺りは、参加者をお客さま扱いせず、子ども扱いもしない「LEARN」ならではといったところでしょう。すべてにおいて、参加者自らの「気づき」を重視するプログラムゆえ、ちょっぴりほろ苦い思い出になった参加者もいたようです。
さて、的山大島に暮らす人にとって、買い物や通院、進学などのため、船で島外へ出ることは日常の一部です。都会に暮らしていれば、店や病院、学校が近くにあることを特別に意識することはありません。しかし島では、船が暮らしそのものを支えています。
参加者のひとりは、的山大島で出会った人が週に一度、約40分間も船に乗って平戸へ出て生活していることを知り、「10年後、20年後、その人が元気ではなくなったらどうなるのだろう」と考えました。
人口減少や少子高齢化という言葉は誰もが知っています。しかし、それを数字やニュースではなく、島の人々の生活を通して考えたとき、その言葉が持つ意味をよりリアルに感じる機会となったようです。

さらに、参加者たちはグループに分かれ、島で実際に「働くこと」に挑戦しました。
畜産農家では、子牛の世話や出荷に向けた作業を体験し、別のグループは米農家の棚田で稲刈りなどを手伝います。そして労働体験の後は、料理研究家の土井善晴さんとともに地元の食材を使ったみそ汁をつくり、島の人たちと食卓を囲みました。
食材は、突然、食卓に現れるわけではありません。つくる人がいて、運ぶ人がいて、調理する人がいる。その向こうには土地の気候や文化があり、さらに長い時間の積み重ねがあります。一杯のみそ汁からも、物や人、文化、時間という無数の点のつながりが見えてくるのです。
●見えていなかったのは「自分自身」だった
こうして5日間の「旅」を経験した参加者たちは、「流れ」という問いに対する答えを見つけられたのでしょうか?
実は「旅」プログラムでは、毎晩、その日の“振り返り”がおこなわれ、参加者たちは当日、どのような体験をしたのか、みんなの前で発表します。しかし、それを聞いた中邑さんや赤松さんからは厳しい指摘が。「君たちはメモを取ることに必死で、肝心な何かを見落としているのではないか?」、「その感想は“〇〇を知りました”、“〇〇を知りました”という、いい子の作文でしかないのではないか」といった具合です。
プログラム中、情報機器に頼ることなく得た情報や知識の数々。学校教育という枠の中では、参加者の発表は“いい得点”を得られたのかもしれません。ゆえに、先生たちの言葉に複雑な表情を浮かべる参加者がいたのも事実です。

黒岩さんも「私たちは、皆さんを長崎や九州のエキスパートに育てるためにここに来たわけではありません。しかし、ここでの体験すべてを材料にして欲しいと思いますし、この場で何か正解をいわなければならないわけでもありません。“できなくて悔しい”、“考えをまとめられなくて悔しい”という思いを、夢を実現する力を養う原動力にして欲しいです」と、参加者の発表を受けて語りました。
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