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豊田章男氏はなぜチーム体制を一新した? 6年ぶりに挑む「ニュル24時間」からトヨタの「もっといいクルマづくり」が加速する理由とは【Behind the Product #26】

6年ぶりのニュル挑戦に向けて体制を一新した理由とは

 今回、「ニュル24時間」にTGRRでチャレンジすることになった背景について、豊田氏は次のように振り返ります。

2025年の「ニュル24時間」に挑むトヨタ陣営。なぜ豊田章男氏はチーム体制を一新したのか?
2025年の「ニュル24時間」に挑むトヨタ陣営。なぜ豊田章男氏はチーム体制を一新したのか?

「(トヨタ自動車の)ワークスチームになってしまったTGRは、世界選手権を戦っていく中で、モータースポーツの現場で進める『もっといいクルマづくり』という大切な気持ちが薄れたように感じました。そんなTGRに『自分の居場所がなくなった』と感じた私が立ち上げたのがRRです。

 プライベートチームでスーパー耐久シリーズに参戦してみると、TGRのエンジニアたちが『壊しては直す』というクルマづくりをいっしょに進めてくれるようになりました。するとエンジニアたちの心の中に、成瀬さんとニュルの活動をやっていた頃の純粋な気持ちが蘇ってきたように感じたのです。

 モリゾウが真ん中にいればTGRとRRは一体になれる……そうすれば、モータースポーツを起点とした『もっといいクルマづくり』のスピードを、さらに早めていけると考え、今回、TGRRを立ち上げたのです」

 筆者は「東京オートサロン2025」で、TGRRを結成して「ニュル24時間」に挑戦するという発表を聞いた際、「かつてGRを立ち上げて、小さなトヨタが大きなトヨタを変えてみせたように、常に現状に満足せず、チャレンジを止めない豊田氏らしい挑戦だな」と思いました。

 では、参戦するマシンの出来栄えはどうでしょう?

「GRヤリス」のGR-DAT仕様は左ハンドル車ですが、中身は2024年のスーパー耐久シリーズを戦っていたモデルとほぼ同じ。過去、「ニュル24時間」にチャレンジしたマシンは、レクサス「LFA」やトヨタ「86」、そして「GRスープラ」といった発売前のプロトタイプに加え、「LFA CodeX」や「LC」といった先行開発技術を搭載する車両など、“豪華”な顔ぶれでした。

 それに比べると、今回の「GRヤリス」は極めてフツー。その理由について、「GRヤリス」のチーフエンジニアである齋藤尚彦氏は次のように話します。

「もちろん、新技術も用意していたのですが、モリゾウさんから『齋藤、いろいろやろうとしているようが、今回はニュルをしっかり走り切ることが目的だからな!』とクギを刺されてしまいました(苦笑)。

 確かにいわれてみると、『GRヤリス』はレースやラリーなどさまざまなモータースポーツを通じて鍛えてきましたが、『ニュル24時間』はコロナ禍の影響もあって参戦したことがありません。

 つまり、われわれがモータースポーツを起点に開発してきた『GRヤリス』というクルマが『ニュルで通用するのか?』ということを確認することも重要なミッションなんです。

 一方、モリゾウさんは『新しいことはスーパー耐久でどんどん試せ!』といっています。2025年シーズンはGRチーム スピリットで『GRヤリス』のGR-DAT仕様を走らせていますが、そちらではさまざまなトライをおこなっており、データを共有しています」

 今回のニュルブルクリンクに、TGRRは予備車を含めて2台の「GRヤリス」を持ち込みました。しかし、この予備車は単なるスペアカーではなく、メインカーとは異なるアイテムを搭載し、比較テストをおこなっていたようです。

 パッと見で分かりやすい2台の違いはロールケージで、1台は通常の手溶接で仕上げたものであるのに対し、もう1台はロボティクスを活用したSFA(Sequence Freezing Arc welding)で仕上げたものが装着されていました。ちなみにドライバーに印象を聞いてみると、前者の方が乗りやすいと答えてくれました。

 それにしても、現地での「GRヤリス」人気は抜群。車検時には他チームのスタッフまでもが興味津々にマシンを眺めてくる姿を何度も目撃しました。

 かつて「トヨタさんにはこんなクルマはつくれないでしょ?」という屈辱をイヤというほど味わった豊田氏ですが、今回のニュルでの光景には「やっと、ここまで来ました!」とうれしそうな笑顔を見せていました。

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