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豊田章男氏はなぜチーム体制を一新した? 6年ぶりに挑む「ニュル24時間」からトヨタの「もっといいクルマづくり」が加速する理由とは【Behind the Product #26】

トヨタにおけるマスタードライバーの“流儀”とは

 2025年の「ニュル24時間」は、豊田氏にとって6年ぶりのチャレンジとなります。

2025年の「ニュル24時間」に挑むトヨタ陣営。なぜ豊田章男氏はチーム体制を一新したのか?
2025年の「ニュル24時間」に挑むトヨタ陣営。なぜ豊田章男氏はチーム体制を一新したのか?

 2007年は開発中のレクサス「LF-A」プロトタイプ、2014年は「LFA」、2016年は「RC」、そして2019年はトヨタ「GRスープラ」で「ニュル24時間」に参戦した豊田氏ですが、当時と今とで決定的に違うのは、氏のドライビングスキルでしょう。

 豊田氏は2018年からスーパー耐久シリーズに参戦。成瀬氏に代わる“ドライビングの先生”である佐々木雅弘選手とともにデーターロガーを活用しながらドラテクを磨き、今ではプロドライバーとほぼ変わらないタイムでサーキットを周回するほどの腕を身につけています。

 ちなみに、2024年にテストで久しぶりにニュルを走ったときの印象を、豊田氏は次のように振り返ります。

「以前はニュルの走り方が分からず、常に『本当に生きて帰って来られるのか?』と怖がりながら走っていた記憶しかありません。しかし、日本やアジアで鍛えたスキルを活かし、『もう一度、ニュルと“語り合って”みたい』と思いました。

 実際に走ってみて、道との会話が少しできるようになった気がしています。おそらく運転に対するマージンが相当増えたのでしょう。気持ちに余裕が生まれ、周りがよく見え、視界が広がりました。すると、より先が見えるようになりました」

 ニュルのパドックで筆者の姿を見つけると、いつもと同じように優しく接してくれた豊田氏ですが、一方でドライバーとして参戦するというプレッシャーは相当大きい様子。

 実は豊田氏、2025年の年初からスーパー耐久で強い踏力が必要なブレーキを踏み続けてきた影響から股関節の痛みを抱えており、一時は歩くのも困難だったといいます。現在は回復傾向とのことですが、足への負担を減らすべくマシンのブレーキにはマスターバックがつけられているといいます。

 今回の「ニュル耐久」で、ニュルブルクリンクを4周走った(1周25km以上なので約100km。富士スピードウェイの約22周分に相当)豊田氏は、ゴール後、チームスタッフ全員に次のように話しかけました。

「成瀬さんがこの地で亡くなったのは67歳のときです。その後、私がマスタードライバーを引き継ぎましたが、今回、私は自身の年齢に対し、めちゃくちゃプレッシャーを感じていました(「ニュル耐久」参戦時、豊田氏は68歳、先日の誕生日で69歳に)。

 果たしてニュルは、68歳の私を受け入れてくれるのか? 2024年からは体も壊し、『やはり68歳という壁を超すことができないのか?』と、正直、この1週間は完走できるのかどうか、本当に不安でした。しかし、4周走る切ることができました」

 豊田氏は以前、筆者に「ニュルを満足に走れなくなったら、マスタードライバーを辞めます」と打ち明けてくれました。実はこれと全く同じことを成瀬氏も話していたことを覚えています。

 これが、トヨタにおけるマスタードライバーの“流儀”なのでしょう。おそらく豊田氏は、それくらいの強い覚悟を持って今回のニュルに挑んでいるのだと思います。

「今回、無事に走ることができた1番の理由は何か? それは皆さんが持ち場、持ち場で、家庭的でプロフェッショナルなRRの“地”を出してくれたことです。そして、すべては『モータースポーツを起点にしたもっといいクルマづくり』につながっているということを、私だけでなくみんなが実感してくれていることです。

 本当に感謝したいですし、これを機に、われわれの『もっといいクルマづくり』は新たなスタートを切ると思っています。私たちをニュルに導いてくれた成瀬さんという師匠を置きながら、新しいメンバーとともに新たなニュル活動をやっていくことを宣言します。皆さん、ありがとうございます」(豊田氏)

* * *

 今回「ニュル24時間」にチャレンジするTGRRが、2007年に初めて参戦した“元祖”GRと決定的に異なる点、それは、同じ志を持つ仲間がたくさんいることでしょう。

 豊田氏は日頃から「ニュルは僕の原点である」と話します。その本質は、豊田家の人間であるがゆえ、常に色眼鏡で見られてきたトヨタでの人生の中で、初めて“役職”ではなく“役割”で働ける場所がニュルだったからではないか……筆者はそう考えます。

 同じ目的に向かい、同じ目線で仕事をおこない、同じ釜の飯を食べ、同じクルマで移動する……これこそが豊田氏が目指す“ワンチーム”に対するひとつの答えなのかな、と感じました。

 そういえば「東京オートサロン2025」のTOYOTA GAZOO Racingブースで「予言的2025年モリゾウの10大ニュース」というプログラムが展開され、「『ニュル24時間』レースを『GRヤリス』で完走! モリゾウ男泣き!」という項目が4位に入っていました。果たして本戦は、どんな結果となるのでしょうか? 筆者は現地で新生TGRRのチャレンジを見届けたいと思います。

Gallery 【画像】「えっ!…」2025年はどんなレースとなる? これがTGRRの挑んだ「ニュル24時間」の前哨戦の模様です(28枚)
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