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“ヤリス風”ミッドシップクーペに直4搭載の「GR86」!? トヨタが「スーパー耐久」に実戦投入した“次世代スポーツカー”の正体【Behind the Product#49】

新開発のFRとミッドシップ4WD…トヨタが挑むスポーツカーの未来

 昼間は暑さが残るものの、早朝や夕方は肌寒さを感じる秋の気配が漂う「岡山国際サーキット」。「スーパー耐久」シリーズ(以下、S耐)第6戦のパドックを歩きながら思わず足を止めたのが、「GR Team ORC Field」と「TGRR」のピットでした。

 そこに並んでいたのは、見た目の枠組みすら打ち破り、未来の量産スポーツカーの息吹をダイレクトに漂わせる2台のテスト車両でした。

 1台は、極限までチョップされた低いルーフが目を惹く流麗なクーペ。名目上は「GRヤリス Mコンセプト」と名づけられていますが、リアのエンブレムにはピンクの蛍光ペンで手書きされた「風(ふう)」の文字が……。犯人は開発ドライバーの佐々木雅弘選手。「どう見ても『GRヤリス』じゃないでしょ!」という現場の愛あるツッコミに対して、開発陣も苦笑いするミッドシップ4WDクーペです。

 そしてもう1台、その隣で息を潜めていたのが、一見すると普通の「GR86」でありながら、中身は完全に白紙から仕立て直された「GR86 Future FR concept」。チーム内では親しみを込めて「レビン」と呼ばれ、モリゾウこと豊田章男氏が「大嶋(和也)選手の自由研究」と笑って教えてくれたマシンになります。

 これまでの「S耐」での開発車両といえば、市販車の骨格をベースに試行錯誤を重ねる、いわば“魔改造”の領域でした。しかし今回、岡山に持ち込まれた2台は全く違います。市販車の制約をかなぐり捨て、「理想のスポーツカーをつくるための原理原則」にゼロから立ち返った、実質的なフルオリジナルの試作車だったのです。

トヨタ「GRヤリス Mコンセプト」
トヨタ「GRヤリス Mコンセプト」

 なぜ今、トヨタはこの2台を同時にサーキットへ解き放ったのか? 2台に込められたメカニズムと開発のねらいに迫ります。

●直列4気筒NAを初公開! 「GR86」ベースの開発車両は中身が別物

 まずは「レビン」の愛称で呼ばれるFRコンセプトからひも解いていきましょう。2022年から「S耐」を舞台に“公開開発”が続けられてきたこのプロジェクトですが、これまでの現行型「GR86」の延長線という考え方を一度すべて捨て去ったといいます。陣頭指揮を執る藤原裕也氏は、「ライトウェイトスポーツカーとして本当につくりたいクルマはどうあるべきなのか? ゼロから考え直しました」と語ります。

 ボンネットフードを開けると、その言葉がウソではないことがひと目で分かります。そこに収まるのは、トヨタが開発を進める次世代ユニット“G20E”をベースに仕立てられた、新開発の2リッター直列4気筒NA(自然吸気)エンジンです(実は何気に、今回が実機の世界初公開!)。

 驚くべきは、その搭載パッケージングです。従来のマシンは直列3気筒ターボエンジンを搭載していましたが、それよりもさらにエンジンがバルクヘッド側へと押し込まれ、極限のフロントミッドシップ化を遂げています。

 さらに、オイルパンを極限までフラットな形状にすることで、ドライサンプ化に頼ることなくエンジンの搭載位置そのものを下げ、フロア下は強固なカーボン製アンダーパネルで完全にフルフラット化。ノーズの慣性モーメント低減と低重心化を、物理レイアウトの根本から突き詰めています。

トヨタ「GR86 Future FR concept」
トヨタ「GR86 Future FR concept」

 過給器によるトルクに頼るのではなく、わずかなアクセル操作にも鋭く反応し、どこまでも淀みなく吹き上がっていく超高回転NAユニット。かつて「アルテッツァ」などに積まれていた名機“3S-GE”の官能性を、最新の燃焼技術で現代に蘇らせたかのような胸のすくエンジンと考えていいでしょう。

 シャシー側も妥協はありません。フロントサスペンションは見慣れたストラット式をシレっと捨て去り、完全新開発のダブルウィッシュボーン式へと大刷新。リアも形式こそ同じですが、アーム配置やジオメトリーからリンク構造に至るまで、ゼロから設計し直された全くの別物となっています。

 転舵時のタイヤ接地変化をミリ単位でコントロールできる足まわりと、極限のフロントミッドシップ。この黄金比により、コーナー進入時の回頭性は鳥肌が立つほどシャープに研ぎ澄まされていました。

 テストを担当する大嶋和也選手も「すこぶる乗りやすい」と絶賛。藤原氏が「プロがここまでいいといってくれる理由(レシピ)をこれから因数分解して、将来の量産化につなげたい。何より僕自身が早く乗りたいです(笑)」と目を輝かせていたのが印象的でした。

Nextなぜクーペに変身した? 「GRヤリス Mコンセプト」進化の理由
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